今日も暑かった。午後、いくつか来週の予想を暗澹とさせる情報があったが、でも、まあ、週末だからいいや。
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ということで今日は週末。一杯やりましょう。
酒を酌むのに無言でもあるまい。古い古いうたを歌ってみます。
「瓠葉」のうた。
幡幡瓠葉、采之亨之。君子有酒、酌言嘗之。
幡幡たる瓠葉、これを采(と)りこれを亨(に)る。君子に酒有り、酌みてここにこれを嘗めん。
「幡」(ハン)は風が吹いて何かがはためく様のオノマトペ。「瓠」は「瓢箪」。「瓠葉」といってますので、あの瓢箪の実ではなく、大きな葉っぱを思い浮かべていただきたい。
ばたばたと風に鳴るひょうたんの葉、それを採ってきて烹て料理する。
立派なわれらには酒があります、まずわしから、さかずきに注いで飲みますぞ。
酒を爵(徳利に当たる)に汲むことを「酌」といい、これを杯に注いで飲むのですが、まず一杯めは主人の方が飲む。これを「嘗」(しょう)という。要するに味見である。
「お、これはなかなか旨い。つまみがも少し欲しいですな」
有兎斯首、炮之燔之。君子有酒、酌言献之。
兎の斯首(ししゅ)有り、これを炮(あぶ)り、これを燔(や)かん。君子に酒有り、酌みてここにこれを献ぜん。
「斯首」は「ひとつ」の意。ウサギですから「一羽」です。
ちょうどウサギが一羽ある。これを毛をつけたままであぶり、毛をむしってからあぶる。
立派なわれらには酒があります、次はあなたのさかずきに注いで差し上げましょう。
「炮」は毛のついたまま遠火であぶり、泥土を落とす。「燔」は毛をとって火にかけるのである。
なお、「兎斯首」は「兎のこの首」と読んで、「兎の頭を料理するのだ」という説もあります。
有兎斯首、燔之炙之。君子有酒、酌言酢之。
兎の斯首有り、これを燔き、これを炙(あぶ)らん。君子に酒有り、酌みてここにこれを酢(かえ)さん。
「炙」は肉を串刺しにして火にかけることをいいます。うまそうになってまいりました。「酢」は「お酢」ではなく、「酬酢」(しゅうそ)と熟する「酢」で、さっき主人から「献」じたさかずきを、客人の方から返す、いわゆる「返盃」のことです。「さしつ、さされつ」の「さされつ」ですね。
この一連は客人の方からの歌になります。
一羽のウサギが火にかけられ、串刺しにされて焼かれている。
立派なわれらには酒があります、今度はわしの方からご主人のさかずきに注がせていただきますぞ。
有兎斯首、燔之炮之。君子有酒、酌言醻之。
兎の斯首有り、これを燔き、これを炮る。君子に酒有り、酌みてここにこれを醻せん。
「醻」(シュウ)は先ほどの「酬酢」の「酬」と同じ意味の文字。お酒を勧める、の意。「酬(むく)いる」と訓じるように、客人から返された杯をまた返すのである。
一羽のウサギを火であぶり、火にかけてそろそろ焼けますぞ。
立派なわれらには酒があります、もいちどあなたにさかずきに注いでさしあげましょう。
わははは。
と笑い声さえ聞こえてきそうな楽しげな宴ではございませんか。
朱子はいう、
序説非是、此亦燕宴之詩。
「序」の説は是にあらず、これまた燕宴の詩なり。
毛詩の「詩序」では「この詩は上層部の人が礼を失って好き放題にしていることをそしっているのだ」とされているが、それは大間違いである。これは要するに宴会の時の歌だ。
と。
また、張丁傑「詩序解」にいう、
有不任欣喜之状。
欣喜を任(ほしいまま)にせざるの状有り。
よろこび、たのしんでいるのだが、その気持ちだけに流れてしまわないようにする歌だ。
と。
ささ、あなたももう一杯。ははは、社交的で明るく、常識的なオトナのわれわれにふさわしい歌だ。
肝冷斎は、この詩は宴会の時に、おそらく第一連:楽人、第二連:主人独唱、第三連:客人独唱、第四連:みんなで合唱みたいな感じで歌いながらお酒をつぎあった、儀礼の歌だったのだと思いますよ。
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「詩経」小雅・魚藻之什より。
ああ友と飲むお酒はたのしいのでしょうなあ。(関連→本年7月26日)
ほんとのことをいえば、わしは今日も一人であった。一人でいるときに自らお酒飲むような風雅な嗜みも無い。
今日もしごと終わって野球観て帰ってきてからは一人でうじうじしていただけで、一人なので食い過ぎて体重も増え、キモチ悪い。いい大人がこんなことでは恥かしいので、人とうまく付き合えているかのようなふりをしよう、と上記のように歌い、また独り言をしゃべっていただけなのだ。情けない。今となってはもうどうしようもないが、どうやったらいいオトナになれていたのだろうか。
ちなみに、上記の「「瓠葉」の詩、海音寺潮五郎先生の流麗な訳詩がありますので、ご紹介しておきましょう。
「ふくべの葉」
風に吹かれるふくべの若葉
とりて煮て
あるじに酒あり
酌みて肴にせむ
兎ひとつあり
炮(けやき)し燔(や)きて
あるじに酒あり
酌みて客に献(すす)めなむ (以下略)