おいらは山中のお寺に隠れることにしましたよ。
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お。なんかエラそうなおっさんが御堂の方に来たぞ。
そして静かに座って詩を作り出した。
如水新凉欄可憑。 水の如きの新凉、欄も憑(よ)るべし。
思詩独坐静于僧。 詩を思いて独り坐せば、僧よりも静かなり。
水を打ったあとのように宵から涼しくなってきた。これなら欄に寄って夕景を見ることもできよう。
それから、わしは詩を作ろうとひとり座りなおした。禅坊主よりも静かなたたずまい。
しばらく経ちました。
繁蛍照夜来還去、 繁たる蛍は夜を照らして来たり、また去り、
解事山童不上燈。 解事の山童は燈を上らさず。
あまたのホタルが夜闇を照らして飛び交い飛び去っていく。
この山寺の小僧はどうやら物事のわかったやつらしく、わざと灯りもつけずにホタルの光をほしいままに見させてくれるわい。
え? 単にさぼっているだけなのに、褒めてもらったみたい。
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うひうひ。
でも目立ってしまうとやつらにまた見つけられてしまうかも知れませんからね。この山もまた引き払わねばなるまい。
ちなみにこのおじさんは新潟の片野松外、「夜坐」(夜座っている)という七絶でした(「大正五百家絶句」巻一所収)。このひとはかなり上手いな。
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