平成25年4月16日(火)  目次へ  前回に戻る

 

ボストンで爆発。どういう背景なのかまだ未定ですがいずれにせよ恐ろしい世の中でございます。自分の身は自分で守る気概が必要となってまいりましょう。

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隋の末、治安が麻のように乱れた時代のことでございます。

竇建徳という若者がおりました。

有劫盗夜入其家。

劫盗の夜、その家に入る有り。

ある晩、強盗団が彼の家に押し入ろうとした。

門戸は固く閉ざしてあったので、強盗団は屋根に上り、屋上を破って侵入しようとしたのである。

これに気づいた建徳は家人に静かにしているよう命じると、ひとり剣を手にして破られようとしている屋根の下に立った。

やがて、屋根が破られ、

「へへへ、お邪魔するぜ!」「よくおネンネしているようだな」「そのままあの世までおネンネよ」

と口々に呼ばいながら、強盗たちが飛び降りてきた!

建徳は闇の中、強盗が飛び降りてきた瞬間を狙って、次々と剣を突きたてたのである。

連殺三盗。

三盗を連殺す。

最初に入り込んできた強盗三人をこうやって斃したのだった。

「うわ」「ぎゃ」「ひい」

と三人の叫び声が闇の中で聞こえた。

「あわわ、何かいるみたいだぞ」

前に入った者たちが次々と倒されたので、

余盗不敢入、呼取其尸。

余盗あえて入らず、呼びてその尸を取らんとす。

後続の強盗たちは何か妖怪めいたモノがいるのではないかと疑って降りて来ようとせず、倒れた仲間をどうやって回収しようかと言い合っている。

建徳は、悠然として呼びかけた。

「おれが何とかしてやろう。

可投縄下、懸取去。

縄を下に投ずべし、懸けて取り去らしめん。

縄を投げおろしてくれ、それに仲間を結び付けて引っ張り上げられるようにするから」

その声があまりに悠然としていたので、強盗たちには仲間の一人が生き残って呼びかけてきたように聞こえたのであろう、

「よっしゃ、頼むわ」「気をつけろよ、まだ何かがいるかも知れんぞ」

と縄を投げおろして来た。

建徳乃自懸、使盗曳出。

建徳すなわち自ら懸かり、盗をして曳き出さしむ。

建徳はその縄を自らに結び付け、「よし、一人目を引き上げてくれ」と呼びかけて、強盗たちに自分を引き上げさせた。

そして屋根の上にたどりつくと、

捉刀躍起、復殺数盗。

刀を捉えて躍起し、また数盗を殺せり。

刀を持ちかえて飛び上がり、さらに数人の強盗を斬り殺した。

「うわあ」

「ば、ばけものが出たー」

強盗たちは混乱して屋根から転げ落ち、仲間の遺体を残したまま逃げ去ってしまったのであった。

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以上。どっとおはらい。

もとは「唐書」あたりにあるお話だと思いますが、今日のところは明・馮夢龍「智嚢全集」巻十一の記述に従った。

竇建徳はこのような活躍で郷里での衆望も篤くなり、ついに人民たちから推されて自警隊長となったが、県官たちはこれを群盗の一種であると認定し、見せしめのために建徳の留守中にその家族を皆殺しにしてしまった。絶望と憤怒に駆られた建徳はついに隋に対して叛旗を翻し、やがて群雄の一人になるのである・・・

・・・が、それはまた別のときに語るべきお話じゃて。

お若い方々はもう眠りなさりませ。そして明日の朝が来てまた荒廃した現し世に引き戻されるまでのわずかな時間を、夢の中に過ごしなさるがよかろうぞ。ひっひっひっひ・・・。

 

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