二日間生きていたです。二日でかなり太った。
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さて、帝堯の時代、
どぼぼぼ〜ん。・・・・・・・・・
と、
火星之精、墜於南海中。
火星の精、南海中に墜つ。
火星の精「熒惑公子」は南の海の中に落ちた。
「あちゃー、海の中に落ちちゃったかねー」
公子は波の間から頭を出してあたりを見回したが、適当な陸地が無い。
「島影も見当たらないですね。ああよかった。わたしは出不精だし、他人と会って話とかするの苦手だからね」
とその境遇を喜んでいた公子であったが、しかし、時間が経つとだんだんと沈んでいきます。
「このままニンゲンの姿でいたら、溺れちゃいますよ」
と誰に言うともなく言いながら、
ぼわ〜ん
と
為大珠、径尺余。
大珠、径尺余と為る。
さしわたし一尺以上の巨大なタマと変じた。
「玉」は山中の岩石性のタマですが、「珠」は貝類などに造られる水棲のタマをいいます。(→こちらなど参照ください ○珠(鮫人))
そして適当な大きさの貝殻を見つけてその上に文字通り転がりこむと、
「これは楽チン、楽チン」
そのまま波間に沈んだり浮かんできたりして、漂っていた。
時出海上、光照数百里、紅気亘天。
時に海上に出づれば、光は数百里を照らし、紅気天に亘る。
時おり海面に浮かんでいるときは、光を放ち、その光は数百里(百シナ里で40キロぐらい)先まで届き、遠くから赤いガス状のものが空まで昇っているのが見えるのだった。
そこは、今の海南島のあたりであったということだ。
以来何千年の月日が流れたが、公子はあまりニンゲンの歴史には絡んできたことがない。それぐらい出不精なのである。
そして、
後有時出焉。
後にも時に出づるあり。
今でも時々、その赤いガス状の光が空まで昇っているのが見られることがある。
なにしろいい加減なひとなので、彼は今もまだ地球上にいて、波間を漂うている可能性が大きいのである。
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ということで、熒惑公子はまだ地上にいるかも知れないのです。「録異記」巻七「異石」より。
おいらも波間を漂うているような生活。