平成24年12月18日(火)  目次へ  前回に戻る

 

今日も飲み会。二段重ね。しごともつらいし、眠いので寝まちゅよ。寝る前に・・・

・・・・・・・・・・・・・・

ぼうや、よゐこだネンネしな。

ぼうやがネンネした後は、おとなのオトギバナシの時間だぜ、へへへ。

湖南・桃源の女・呉氏、毎晩決まった夢を見た。どんな夢かといいますに、

与一書生合。

一書生と合す。

一人の若い読書人と愛し合う夢である。

夢の中でその男に姓名を問うと、男曰く、

僕瘦腰郎君也。

僕は瘦腰郎君なり。

「わたしは、「腰細の若旦那」と呼ばれておりますよ」

と。

そしてまた、女の果てきるまで、愛し合うのである。

何をたわごとを、と思う向きもあるかも知れませんが、夢の中のことですよ。無意識下でエゴとかスーパーエゴとかアニムス・アニマとかがせめぎあって、こんな淫夢を見るのであろう・・・と思っていましたところ、

一日昼寝、書生忽見形入女帳。既合而去。

一日昼に寝たるに、書生たちまち形を見(あらわ)して女の帳に入る。既に合して去る。

ある日、女が昼間から寝ていたところ、くだんの若旦那が突然すがたを現して女のベッドのとばりの中に入ってきた。そして、昼間から愛し合ったのである。

愛の行為が終わって、女は夢うつつ。

男はいつものように軽く女のくちびるを吸うと、ベッドから出て行く。

普段は男の姿が夜闇の中に掻き消えて行くのを見て女は深い眠りにおちいるのだったが、この日は昼間だったので、とばりの向こうに出て行ったあとも男の後ろ姿が見えたのである。

見つめていると、瘦腰の若旦那は

出戸漸小、化作蜂飛入花叢中。

戸を出でてようやく小さく、蜂と化作して花叢の中に飛び入れり。

とびらから出るとだんだん小さくなり、ついにハチに変化すると、花咲くくさむらの中に飛び入って行った。

「ん、まあ」

女はベッドから飛び起きて、とびらから外を覗くと、くさむらの中には確かに小さなまるいハチがいる。

「おほほ、かわいい」

女取養之。

女、取りてこれを養う。

女はこのハチを捕まえ、エサをやり、放し飼いにした。

さてさて。このハチ、

自後恒引蜜蜂至女家甚衆。其家竟以作蜜興富甲里中。

自後、恒に蜜蜂を引きて女の家に至ること甚だ衆(おお)し。その家、ついに作蜜を以て甲里中に興富す。

これ以後、いつもたいへん多数のミツバチを引き連れて女の家にやってくるようになった。こうして、その家は、ついにハチミツ作りによって村一番の金持ちに成りあがったのである。

ちなみにこの女は名を呉寸趾といった。寸趾とは、その足跡が小さく、一寸ほどしかないことを言う。すなわち

寸趾以足小得名。

寸趾、足の小さきを以て名を得たり。

この女・寸趾は、足が小さいので名高くなったのである。

このころ、ようやく小さく、弓のように足甲の曲がった奇形の足が美しいと認められ始めたころであった。この女は足のゆえに多くの男から求婚されたが、ついに瘦腰郎君の妻であると名乗って、生涯婚しなかった。

―――これは唐・玄宗皇帝の天宝年間(742〜756)のことなのだそうであります。

「小さい足がイカスぜ」「ハアハア」ということになって、ついにそれを人工的に作る「纏足」をはじめますのは五代のころだと言われておりますので、この呉寸趾お嬢さんは流行の走りだったのである。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・

元・林坤「誠斎襍記」巻上より。

どこまでほんとのことなのであろうか。・・・まあいいや。わしはすでに夜半にもかくのごとき甘い夢を結ぶことはなくなり、心荒んでいるのでどうでもいいのである。なにしろ休日まであと三日もあるのだ・・・。

 

表紙へ  次へ