勤労に感謝します。
さて、波照間まで来た。どんどん賢くなっていくわしじゃ。今日の教えは以下のとおり。
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明の時代のこと、某という県知事には、郷里に八十になる母がいた。
この老母が
剪髪一縷寄之。
髪一縷を剪りてこれに寄す。
自分の髪を一筋切って、むすこに送ってきた。
というのである。
形見というつもりだったのかも知れないし、何かの仕送りの中に混ざり込んでいただけなのかも知れない。
このことが、同僚に当たる府知事の唐有懐の耳に入った。
唐は
聞而悪之、力請黜免。
聞きてこれを悪み、つとめて黜免せんことを請う。
このことを聴きつけて、県知事の行いをにくみ、これを免職するように上司の太守に強く請求した。
太守、
是素無大過。
これ、もとより大過無し。
「彼に大きな失敗は無いのだぞ」
と断ったが、唐は
度不得見其子而死。而某居官如故。一縷髪足矣。過孰有大于是者乎。
その子を見得ずして死なんことを度(はか)るなり。而して某は官の居ること故(もと)の如し。一縷の髪にて足れり。過ちのいずれかこれより大なるものあらんや。
「あいつの御母堂は、むすこともう会えないまま死ぬ、と思って、形見に送ってきたのでございますぞ。それなのに、あいつは、平然と役人をし続けているのです。一本の髪で十分です。それ以上に大きな失敗が、この世のどこにあるというのでございますか!」
と説き、さらに自ら涙を落とした。
太守、ついに朝廷に上奏して、県知事・某を免職せしめたのであった。
唐はこの事件によって、「孝徳を全うせんとする仁人なり」との評判を得、中央政界への足掛かりを得た。なお、その息子は道義を説いた高名な儒学者・荊川先生である。
ちなみに、失職した県知事の母は自分のせいでそんなことになったことを聴いて、いたく嘆いたということである。
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清・金埴「不下帯編」巻四より。
円安株高になったらマスコミは「円安株高にしやがって」と野党党首を批判できるのでございます。一本の髪の毛も「使える」のが政治の世界なのでございますなあ。