平成24年10月24日(水)  目次へ  前回に戻る

 

今日もしぼられたわー。(>_<)

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姜氏は男好きのする女で、資力のある「いい男」にしか靡かないと自ら言うていたとおり、武科挙の受験資格を持つ葉某に口説かれて、彼奴の囲い者になった。

ところが葉某の情婦になってしばらくしたところ、この葉某が急死してしまったのである。

姜不慣独眠合勧牀。

姜、独り合勧牀に眠るに慣れず。

姜は、ダブルベッドに一人で寝るのはさびしくってしようがなかった。

ある晩、

有人弾指款扉。

人、指を弾き扉を款(たた)く有り。

誰かが表で指を鳴らし、扉を叩いたのである。

姜は一瞬美しい眉を顰めて迷ったが、すぐに髪のほつれを直すと

「どなたさんだね?」

と扉の閂を外した。

すると、

「おれだ」

解扉葉入。

扉を解して葉、入る。

扉を開けて入ってきたのは、死んだはずの葉であった。

「あ、あんたーーー」

「どうしたい? ほかの男を待っていたのか?」

「何言ってんだよ!」

頓忘已故、燕昵如旧。

頓にすでに故なるを忘れ、燕昵すること旧の如し。

突然のこととてもう死んでいるのをふと忘れ、姜は葉にしなだれかかり、しっとりと楽しみあうこと以前のとおりであった。

・・・・・・・(*^_^*)

さて。

事終わってうっとりと夢見るように満ち足りていた姜の耳もとに、葉が口を寄せてきた。

耳たぶに触れるほどにくちびるを寄せると、そっとささやく。

爾喉有疾。吾為爾視。

なんじ、喉に疾有り。吾、なんじのために視ん。

「おまえ、のどに病気があるんじゃないか。おれが診てやろうか?」

「え? なに?」

「おまえ、のどに病気があるんじゃないか?」

「さあ・・・。あんた診ておくれよ」

姜張吻。

姜は吻を張りぬ。

姜はくちを大きく開いた。

「ふん、おもしろい女だぜ」

葉は笑うと、

接吻。

吻を接す。

口を重ねてきた。

「むむん、あんたあ」

姜はその熱い口づけに身を任せ・・・・・・・

ようと思ったのに、葉は

便吹。

すなわち吹く。

突然、息を吹き込んできたのだ。

其気冷於氷、直達肺隔。

その気、氷より冷たく、直ちに肺隔に達す。

その呼気、氷よりも冷たく、肺の奥にまで吹き込んできた。

「な、なんだよー・・・・」

姜は気を失った。

次に気が付いたときにはもう葉の姿はどこにも見えず、姜は咽喉と胸が激しく痛み、厨房の水甕のところに走り寄ると、何度も何度もひしゃくで水を飲んだが、痛みは治まることはなかった・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「ほんと、あのときは、

至次夕、喉痛不治。

次の夕べに至るまで、喉の痛み治まらず。

次の日の晩まで、のどが痛くて痛くて、どうなっちゃうことかと思ったわよ」

「はあ」

わしは盃を止めて頷いた。

ここは浙江・華亭の場末の酒場である。

カウンターを隔てて目の前にいるのはその姜氏である。

「姜ねえさん、それで、あんたその後は・・・」

「ああ、二日したらけろっと治って、それからはもう葉は二度と現れてくれなくなったから、あたいは二人の家を畳んで、こうやって酒場を開いて暮らしている、てわけよ」

その後は何の不思議なことも無かったという。

というわけで、幽霊の吹き込む霊気の効果は二日間ぐらいであることが判明した。

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清・諸聯「明斎小識」巻十二より。

霊気は二日ぐらいですが、わしの方はつらいおもてのしごとが発生しており、明日・明後日・明々後日ぐらいまで更新できないかも。耐えに耐えて週末近づいてきたのに・・・。

 

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