今日は木偶冷斎(でくれいさい)を会社に出した。本当に何もしなかった―――いや、できなかったろう。会社にとっても損失だが、彼にとっても辛かっただろうと思いますわ。わっはっは。しかしニンゲン、下の方がほんとうはエラいんじゃ。何もしなかったとて恥ずべきでない。
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尻神さま、というものがおるんだそうでございます。北方の国ではなかなかこれが信奉されておるという。
尻神さまの教えに曰く、
人一身各有神。
人の一身におのおの神あり。
ニンゲンの体には、それぞれの部位に神様がおるのじゃ。
というのである。
その中で、尻神さまが一番エラい、というのが尻神さまの教え。
なぜ尻神さまが一番エラいか、というに、
蓋人頭員法天。足方法地。
けだし、人の頭は員(まる)くして天に法る。足は方にして地に法る。
御存じのとおり、ニンゲンの頭はまるい。これは天空がまるいので、その似姿になっているのじゃ。足は四角い。これは大地が四角なので、その似姿になっているのじゃ。
尻者尾骶也。居脊骨之竅処、任一身柱骨之重而当百骸之中。法乎人。
尻なるものは尾骶なり。脊骨の竅処に居り、一身の柱骨の重きに任じて、百骸の中に当たる。人に法るなり。
これに対して、尻というのは尾骶骨のところである。脊椎を受ける穴の底であり、体全体の柱となる重要な役割を任され、百千もある骨の中心になっている。これは、ニンゲン世界の中心となる指導者・聖人の似姿になっているのじゃ。
われわれニンゲンは天を崇拝し地を信仰するが、現実にわれわれが支配され心服しているのは、聖人(すなわち皇帝)ではないか。
所以独取此以喩意。
ひとりこれを以て喩意を取る所以なり。
このことから、当然に尻神さまが最も尊いことが類推されるであろう。
なのじゃ!
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「蠡海集」より。
「天円地方」という考え方そのものが科学的に否定されているわけですけど、むかしの人はバカげたこと信じていたんですね。
それにしても、オモシロくないですか、こういうの。わしは会社休んでいるので心にゆとりがあってこういうの楽しいぞよ。なにしろドクターストップかかってますから会社行けないんですよねー。さあ、明日はわしの代わりにどの肝冷斎が出社するのだ? 泥冷斎か? 怯冷斎か? それとも孤立冷斎か?