今日は身を隠して石狩童子のもとへ。(それでも電話が追いかけてくる・・・)
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「はいさい、寒いさー」
「いや、今日は暑いべ」
と二人で非生産的な時候の挨拶をした後でお互いの肚のうちを探り合います。
「オタク、「人日鳥」ってご存知・・・だべ?」
「ぷぷぷー」
おいらは笑ったさー。
・・・むかし、王建封という武弁、あまり難しい文字は知らなかった。
あるとき、「鴿」(コウ。「はと」のこと)という文字を見て、これを
人日鳥
と讀んでしまった。
―――そうか。・・・そうなのか。
一月七日を「人日」といいます。
王建封は毎年一月七日になると、鷄を料理して一族郎党と宴会を開くようになったということである。
「・・・と「清異記」に書いてあるさー」
「む。さすがだべ・・・」
「では、石狩童子よ、「陳山奇」を知っていまちゅかね」
「ぶひひー」
石狩童子は笑った。
「金の将軍・赤盞合喜は、あるとき、
呼陳㟢為山奇。
陳㟢を呼んで山奇と為す。
陳㟢という武将の名前を読めず、「陳山奇」と呼んだ。
陳㟢はこのことを含み、ついに謀叛を起こしたのであった。
という、そのひとだっぺ」
やりまちゅね。
「そういえば、「西河詩話」を読んでいたらこんな話もありまちたべ」
・・・不思議な能力を持つと噂の陳道人の前に、主人の姜定庵とその友人たちがいくつかの箱を持ち込む。その中には、道人に見えないようにお客たちが選んだ物品が入れられているのである。
道人はその箱をじっと見つめて、
「これは・・・筆じゃ」
「これは・・・枕じゃ」
「これは・・・お皿ですな」
と次々と中身を当てて行く。
すべて正解だ。
やがて、最後の箱になった。
道人は「む」と眉をしかめる。
「これは、いったい・・・むむむ。・・・ヘビじゃ、大きなヘビですな。だが頭にいろんなものをかぶっている・・・」
「はずれ〜」
姜定庵は大喜びで、箱の蓋を明けた。
「ヘビなんか入れてはいませんぞー、これは・・・、あ、そうか!」
姜定庵は押し黙ってしまった。
その箱に入っていたのは花かごであった。「花龕」である。「龕」を二字に分けて「花合龍」と書けば、大蛇の一種であることに気づいたのだ。
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世の中にはすごいひとがいるものさー。「思益堂日札」巻八より。明日も旅いくおいらなのさ。