平成24年8月5日(日)  目次へ  前回に戻る

 

今日は台風がすごいんです。外へ出られないので中でお勉強です。もやもやと香烟たちこめる塾堂で、おいらたち童子は先生にいろいろ訊いてみました。

・・・・・・・・・・・・・・・・・

Q1 先生、どうして森は緑色なのでちゅか?

うむ。実は、

木色本青。

木の色はもと青なり。

植物の色は本来は青なのじゃ。

しかし、草木がすべて緑色になるのは、

蓋緑青黄之間色。木非土不養故青依於黄而緑矣。

けだし、緑は青・黄の間色なり。木は土にあらざれば養われず、故に青は黄によりて緑なり。

緑色は青に黄を混ぜるとできる色である。植物の類は土から養分をとって生育するので、植物の本来の色である青に黄色が混ざって緑になるのである。

「ようくわかりまちたー。まだ葉緑素という概念は知らないのね」

なんじゃ、それは。おとなをからかうものではないぞ。

Q2 先生、ミミズには前と後ろがあるのでちゅか?

うむ、いいところに気づいたな。

これはあるのである。

蚯蚓二竅、一前一後。前竅雖一而備五用焉。

蚯蚓は二竅、一前一後なり。前竅一といえども五用を備えたり。

ミミズには二つしか穴が無いが(人間は九〜十穴ある)、このうち一が前、一が後である。この前の穴は、一つしかないが、五つのはたらきをする。

「五用」(五つのはたらき)というのは、

視聴嗅食歌。

視・聴・嗅・食・歌なり。

見ること、聴くこと、嗅ぐこと、食べること、そして歌をうたうことである。

「歌をうたうのでちゅねー」

Q3 草や木を元気にしてあげるにはどうちたらいいの?

それは簡単なのだ。

凡草木花果、以水澆之則活。

およそ草木花果は、水を以てこれに澆(そそ)げばすなわち活す。

草でも木でも花でも果実でも、およそ植物の類は、水を注ぎかけてやると元気になるのである。

しかし、

以湯澆之則死。

湯を以てこれに澆げばすなわち死す。

湯を注ぎかけてしまうと、死んでしまうのだ。

けだし、

水生気也、湯死気也。

水は生気なり、湯は死気なり。

水は活力をもたらすものだが、湯は死滅させる力を持っているのである。

「なるほど、お湯をかけないように注意しなければいけないのねー」

Q4 先生、春からだんだん夏になっていく季節と、秋からだんだん冬になっていく季節とはどう違うのでちゅか?

これはするどい質問だなあ。

春夏之気飛騰、物因之而変化者亦然。青虫化為胡蝶、水虫化為蜻蛉之類是也。

春夏の気は飛騰せんとすれば、物のこれによりて変化するものまた然り。青虫化して胡蝶と為り、水虫化して蜻蛉と為るの類、これなり。

春から夏の季節のフンイキは飛び上がろうとしているのだ。だから、この季節に変化するものもまた、飛び上がろうとする。見なさい、アオムシにょろにょろが蝶々になる。水の中のヤゴがトンボになる。みんなそうだ。

「「水虫」はミズムシではなくて、水中のヤゴ(トンボ類の幼虫)のことなのでちゅね」

一方、

秋冬之気降潜、物因之而変化者亦然。雀入大水為蛤、雉入大水為蜃之類是也。

秋冬の気は降潜せんとすれば、物のこれによりて変化するものもまた然り。雀の大水に入りて蛤と為り、雉の大水に入りて蜃(しん)と為るの類、これなり。

秋から冬の季節のフンイキは降り沈もうとしているのだ。だから、この季節に変化するものもまた、降り沈もうとする。見なさい、スズメが海や川に入ってハマグリになる。キジが海や川に入ってもっと大きな二枚貝になる。みんなそうだ。

「う〜ん、スズメ→ハマグリ、キジ→二枚貝の例は「礼記」には書いてあるけど、実際には見ることができませんねー」

・・・・・・・・・・・・・・・・・

この先生はもう少し観察・実験が必要でちゅねー。

この先生は明・王達といいます。「蠡海集」(れいかいしゅう)より。何がおもしろいのか知りませんが、こういう変な(当時としては大真面目なわけですが)科学的知識がたくさん集められ、一部問答式になっていて面白い。こんな質問するやついないよ、と思わず失笑してしまうようなのもあります。例えば上のQ2のミミズの口とか。

昨日、東京から裏肝冷斎が出した荷物が届き、こういうタネ本がたくさん届きました。ありがとう、裏肝冷斎よ・・・と感謝しているうちに、明日はもう月曜日かあ〜。ああイヤだイヤだ、仮病で休もうかな・・・。

 

表紙へ  次へ