平成23年8月13日(土)  目次へ  前回に戻る

 

肝冷斎は「仙台方面に行ってきまちゅ」と言い残して、どこかに行ってしまいました。もう帰って来ないと思います。しかたないので、これからはわたしが書きます。

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明の時代、文某という高官がおられた。累進して大きな郡の太守となったが、年五十五、自分のこの先が気になってきて、人を九仙山に遣わし、自分の寿命を占わせた。

山神の占語にいう、

以問孔老人。

以て孔老人に問うべし。

―――そのことは孔という老人に訊け。

と。

そこで、文太守が孔という老人を探してみると、ちょうど山中から郡の役所の修繕に来ている木こりに、孔という老人がいることがわかった。

太守がそのようなしももと直接ことばを交わすことはありません。太守自ら建物の中に座ったまま、また人をやって、役所の中庭で仕事をしている孔老人に、

「おまえに問うべきことがある」

と声をかけさせた。

老人、若い者を指図しながら、

「いや、わしは今、忙しいじゃ」

と答える。

方鋸一大木得板。

まさに一大木を鋸して板を得んと

「いまちょうど、この大きな木をのこぎりで切り下して、板にさせているところじゃからな」

「これは太守さまよりのご質問であるぞ」

「え? なに?・・・そんなことより、おい、板は何枚とれた?」

「太守さまの御寿命をおまえが知っているなら答えよとの・・・」

「何枚とれた? そうか―――

五十五也。

五十五なり。

五十五、だな」

そのとき、

「誰か、誰かーーー!」

という声が建物の中から聞こえてきた。

文太守が胸を押さえて倒れたのである。

太守はそのまま意識を取り戻すことなく、五十五歳で息絶えた。

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のだそうでございます。お盆なので。

前回に引き続き「元明事類鈔」巻二十五より。

 

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