わたしを職場で見かけた、という複数のひとからメールをいただきました。わたしは会社休んでいるのに?いったなにものが?まさか・・・? い、いや、そんな恐ろしいことはあるまい・・・。
きょ、今日は現実の恐怖を忘れるためにもっとコワいお話をしましょう。
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嘉興府海塩県の富豪・趙君挙。家ようやく衰え、その巨大な館を売り払うことになって、自らは近所に小さな家作を設けて移り住むこととした。
この小さな家の落成の日、祝いの宴を催すとてブタを一頭屠って振る舞おうとし、
ピギー・・・・・
と悲しく鳴くブタの首を割いて殺した。
ついで腹を裂いて腸を取り出そうとしたところ、腸は、
ギャーッ!!
忽迸地如虵、蜿蜒而走。
忽ち地に迸(ほとばし)りて虵(ジャ)の如く、蜿蜒(えんえん)として走る。
突然、地面に落ちると、ヘビのようにうねり、自らの意志あるもののように逃げ出した。
将及一里許而止。
まさに一里ばかりに及ばんとして止まる。
五六百メートルもいって、ようやく止まったのであった。
国や家が滅ぼうとするときには怪しいことが起こる、といわれる。一年ならずして、趙はその小さな家も売りに出さざるを得なくなったというのである。
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処州府遂昌県でのことである。
白昼、
忽有大声如鐘、自天而下。
忽ち大声鐘の如きあり、天よりして下る。
突然、巨大な鐘の音のような音声が、空から聞こえてきた。
ひとびと、みな空を見上げたが、
無形。
形無し。
―――何も見えなかったのである。
ヒエーッ!!
けだし、これは
皷妖也。
皷(コ)妖なり。
太鼓妖怪であったのであろう。
翌年、県全域に水災があったという。
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同じ遂昌県でのことじゃ。
徐孟芳の母方の祖父が、河原の石が一個、
自行自走。
自から行き自から走る。
ひとりでに移動していく。
のを目にした。
ウギャーッ!!
これは不思議なものだと思ってその石を拾い上げ、家に持って帰った。
その後特段の不思議も無いので砕いてみたが、ただの石であった。
徐孟芳がいうには、
恐至陰生陽之兆也。
恐るらくは至陰の陽を生ずるの兆しならん。
「おそらく、石のような絶対的に陰なるものの中から陽気が生まれてくる――暗黒の元末の世の中から新しい時代の息吹が聞えてくる――兆しだったのではなろうか」
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あんまりコワくありませんでしたな。現実の恐怖がひしひしと大きくなってくるばかりじゃ。「草木子」巻之三上より。
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