平成23年5月30日(月)  目次へ  前回に戻る

 

今日はあんまりにも会社行くのイヤだったので傀儡人形に行かせようとしたら、さすがはわしの傀儡人形です。やつもイヤでイヤでしょうがなかったようで、会社に行く途中で逃げ出したらしい。なかなか出勤しないので呼び出しがありまして、仕方なく大遅刻して出勤したのである。お笑いごとである。

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お笑いごとをいくつか。

@   あるところにたいへん怒りっぽい男がいた。

この男、六月の暑い日に出かけたところ、向こうから毡帽(せんぼう。毛皮で作った厚手の帽子)をかぶったひとがやってくるのを見かけた。

悪其不時。

その不時を悪(にく)む。

「なんて季節外れなものをかぶっていやがるのか」

男はそのひとに近づいて行って、

便欲殴之。

すなわちこれを殴らんとす。

いきなり殴りつけようとした。

まわりが寄ってたかって止めさせ、家に帰らせたところ、

「腹が立つのに我慢しろというのか」

と我慢しすぎて病気になり、秋を過ぎて冬まで臥せっていた。

ようやく病も癒え、十二月のある日、弟に助けられて近所を散歩することにした。

歩いて行くとずっと彼方に人影が見えた。そのひとは騌帽(そうぼう。馬のたてがみで作った涼しい帽子)をかぶっているようである。すると、弟が駆け出し、そのひとのもとまで走り寄ると、

家兄病初好。乞足下少避。

家兄の病い初めて好し。乞う、足下少避せよ。

「うちの兄貴は病気がやっと治ったのです。あなた様、どうかしばらく道を避けてください」

と懇願したのであったという。

A   城門の外に、たいへん意地っ張りの親子が住んでおりました。

ある日、お客がお見えになったので、おやじは息子に、

「城内の市場に行って肉を買うてこい。よい肉だぞ」

と命じた。息子は、

「唯」(はい)

と答えて城内に急いだ。

肉を買って家に戻ろうと城門まで来たとき、

値一人対面而来。

一人の対面して来たるに値(あ)う。

正面から、一人の男が城内に入ってくるのと相対した。

不幸なことに、この男も意地っ張りであったのだ。

各不相譲、遂挺立良久。

おのおのあい譲らず、ついに挺立してやや久し。

二人とも突っ立ったまま道を譲ることなく、いつまでもにらみあっていた。

いつまで経っても息子が帰って来ないので、業を煮やしたおやじが息子を迎えに来た。

城門のところまできてこの状況を目撃すると、おやじは息子を、

「いつまでお客さまをお待たせしようというのだ!」

と怒鳴りつけた。そして、

汝姑持肉回陪客飯。待我与他対立在此。

なんじ、しばらく肉を持して回(かえ)り、客の飯するに陪せよ。我の、他(かれ)と対立してここに在るを待て。

「おまえはさっさと肉を持って家に帰って、お客さまのお食事に御相伴してこい。その間、わしがこの人とここでにらみ合いをしておいてやる」

と言うて、息子と入れ替わったという。

B   ある人の家に女の子が生まれた。たいへん慶んでいると、隣村の友人が

以二歳児来作媒。

二歳児を以て来たりて媒を作す。

自分の二歳の男の子と、いい名づけにしたいと申し入れて来た。

「媒」はなかだち、結婚の仲介をすること、またそのような業を為すひと。

なお、歳の数え方はすべて「数え年」であるので、この二歳の男の子は満年齢だと一歳です。

その人は激怒した。

「お断りじゃ!

我女一歳、渠児二歳。若吾女十五歳、渠児三十歳矣。安得許此老婿。

我が女一歳、渠(か)の児二歳なり。若し吾が女十五歳ならば、渠の児三十歳ならん。いずくんぞ許し得んや、この老婿を。

わしのムスメは(数えの)一歳で、あちらの息子は二歳じゃ。すると、わしのムスメが十五になると、その息子はもう三十じゃぞ。どうしてそんな年寄とムスメをいい名づけにすることができようぞ!」

「ちょっとお待ちなさいな」

とヨメがムスメをあやしながら言った。

汝誤矣。吾女今年一歳、明年便与彼児同庚。如何不許。

汝誤まてり。吾が女今年一歳、明年すなわち彼の児と同庚なり。如何ぞ許さざらん。

「あなたは間違ってますわ。うちのムスメは今年一歳ですから、来年はあちらのお子様と同じ二歳になりますのよ。同い年なんですから、いい名づけにはちょうどいいわ」

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三話とも明・墨憨斎主人・馮夢龍「広笑府」巻八より。

ああ、登場人物は出てくるやつ出てくるやつ、みんなクレイジーでルーピー。こんなの笑いごとではないぞ。この機会にみんな入れ替えた方がいいぐらいだ、とわたしは思うのですが、そうはいかないのでしょうなあ・・・。

 

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