今日は我が国を代表するやうな大企業のエラいひとを相手に、一時間ほどお話する機会をいただきました。ときどき出てくる畏友SS氏のご紹介のおかげです。ありがたや、ありがたや。
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さて、昨日の続きで、方栄升という人物の仕出かしたこと、でございますが、
このひと、まず、
1 自らを
蓬莱無終老祖朱雀星宝霞仏
がニンゲン世界に下ってきたのである、
と称した。
2.次のような学説を唱えた。(( )内が一般の学説)
・星は四十二の星宿に分かれる。(二十八宿)
・地支(子・丑・寅・・・・・)は十八である。(十二)
・世界を形作っている物質は金・木・水・火・土・慧・動の七種類(七行)である。(金・木・水・火・土の五行)
3.「万年時憲書」という暦を勝手に作ったが、その中で、
・一ヶ月を45日と定めた。
・一年を18ヶ月と定めた。→したがって、一年は810日。
4.「字母」という字書を作り、
・一般に使われている文字を「五行字」といい、
それとは別に、
・「七行字」という独自の文字を創り出して勝手な意味をつけて解説した。→これは上の「五行字」を二つか三つ、多い場合は四つ組み合わせて「一字」としたものであった。
――――おかしなひとですが、さすがに封建シナでも、この程度でタイホはされません。
さらにエスカレートしてまいりまして、
5.この「七行字」で書かれた「破邪顕正明心録」という書物を作り、印刷して、これを経典として仲間(信者)集めた。
6.信者の間で勝手に官位を定めはじめた。官位は、「花」の名前で現わし、一番エライひとから
・紅梅→白梅→牡丹→芍薬→・・・・・・・・・
とされ、これを「九品蓮台」と称した。
7.勝手に官職まで作り始め、三宮・六院・大将軍・大学士・丞相、王・侯・公・伯・大夫などに任命しあった。
――――ここまで来ると○○大臣を任命した×××真理教みたいで、ちょっと危険な感じがしてまいりますが、さらに、
8.方栄升は、
能出神上天、親見天宮殿庭路逕。
よく神を上天に出だし、親しく天宮の殿庭・路逕を見る。
わしは自分の魂を天上の世界に送ることができ、そこでこの目で天上の宮殿の建物・庭・道・横道を見てきたのじゃ。
と言い出して、その図を描き、信者に寄付をさせて、そのとおりの建物を建て始めた。
9.また、黄色い紙に多数の星の名前を書いた一覧表を作った。その数、
凡十万八千七百三十有一。
「これはなんですか?」
と問われると、
「やがてこの世に現われて、世直しをする同志・・・ではないかな?」
と言いだした。
信者に対して、
「おまえも、この星の中のどれかではなかったかな?」
「おまえは、前世ではこの○○星だったのに、もう忘れたのかな?」
などと教えたのであった。
10.自分で考えた文字で「書画」を描き、自分で
神奇天縦。
神奇にして天縦なり。
神秘にして二つとなく、天の与えた才能をそのままに伸ばしたものである。
と宣伝した。
信者たちは本当に天から授かったものだと疑わず、高い値段で買い取っていった。
――――そろそろタイホされてもおかしくなくなってまいりましたが、何とかタイホされずに嘉慶十九年になりました。
この年、
江南北大旱、民人饑饉。
江の南北大いに旱りし、民人饑饉せり。
長江の南北沿岸では大旱害が起こり、不作によって人民は食物がなくなった。
――――「韓詩外伝」にいう、
一穀不升曰歉、二穀不升曰飢、三穀不升曰饉。
一穀升(のぼ)らざるを「歉」(ケン)といい、二穀升らざるを「飢」といい、三穀升らざるを「饉」という。
(五穀のうち)一種類の穀物が食卓にのぼらないのを「あきたらない」といい、二種類のぼらないのを「ひだるい」といい、三種類ダメになると「不作」という。
ので、「饉」はかなりまずい状態です。「饑」(キ)も穀物が実らない状態をいう。
この嘉慶十九年秋八月。
不作による社会の混乱がはっきりしてきたとき、方栄升はある重大な行動に出たのであります・・・。
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疲れてきた。ので、また明日。(PCさまが思い通りに動くといいんですけどね・・・) 清・銭梅渓の「履園叢話」巻十四より。