平成22年11月15日(月)  目次へ  前回に戻る

明日の朝早いんです。寒いのに・・・。

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なので、楽しい話でもして寝ますわ。

●五百年夫妻

たいへん感情の起伏の激しいひとがおりました。

家は豊かでなかったので、わずかばかりの肉を買ってきて、女房にスープを作らせた。

いざ、スープが出てくると、肉が少なすぎて底の方に沈んでしまい、表面にはアブラが浮いているばかり。

そのひと大いに怒って、女房に向かって

「肉はどこに行ったのだ!」

と怒鳴りあげた。

女房がむすーとしたまま黙っていると、

我与爾是前世冤家、便当離去。

我、爾とこれ前世の冤家、すなわちまさに離れ去るべし。

「わしとおまえは前世から憎しみあってきた因縁があるのじゃ。すぐに出ていけ!」

と大声を出した。

女房は「ふん」と言ったまま答えなかった。

そのひと、女房を睨みながら箸でスープをかき混ぜてみると、底からわずかばかりの肉が出てきた。

すると、今度は「わははは」と大笑いし、

我与爾是五百年前結会的夫妻。

我、爾とこれ五百年前結会の夫妻なり。

「わしとおまえは五百年前に約束しあっ(て以来何度も生まれ変わっては結婚してき)た運命の夫婦じゃからなあ」

とにこやかに言うたのであった。

それでも女房は「ふん」とだけ言って、あとは黙っていたそうだ。

●酸酒

ある酒屋に怒鳴り込んできたお客、

嫌其酒酸者。

その酒の酸なるを嫌う者なり。

「この店の酒は酸っぱくなってしまっているじゃないか」と文句を言うのである。

「言いがかりをつけようというのか」

店の主人は怒り、客を縛り上げて梁から吊るしてしまった。

別のお客がやってきて、梁に吊るされているひとを見上げ、その故を問うに、

小店酒極佳、此人説酸。

小店の酒きわめて佳なるに、このひと酸なりと説く。

「我が店でお出しするお酒はたいへん評判がよいのでございますが、このひとはそれを酸っぱい酸っぱいと言いふらしましたのじゃ。」

そこでここに吊るして、営業妨害でお役人に引き渡そうと思っているところだ、と言うのである。

「ほほう、それはそれは」

と言いながら、客はお酒を一杯注文した。

一口飲んだところで、突然眉をひそめ、吊るされたひとを指差しながら店の主人に向かい、

可放此人。

このひとを放つべし。

「このひとを自由にしてやってくれ」

そして、

吊了我罷。

我を吊了し罷(おわ)れ。

「代わりにわしを吊るしてもらいたい」

と言うたのだった。

●蘸酒

たいへん吝嗇な親子がおった。酒を買ってくると、

用箸頭蘸、嘗之。

箸頭を用いて蘸(さん)してこれを嘗む。

ハシの先を酒に浸して、これを嘗めていた。

其子連蘸二次、父叱曰、爾吃如此急酒耶。

その子、連蘸すること二次、父叱りて曰く、「爾、吃することかくのごとく酒に急なるか」。

子どもの方が、ハシを二回つけてからその先を嘗めた。すると、父の方がそれを見て、

「おまえはどうしてそんなに大あわてで酒を飲むのだ!」

と叱りつけた。

という。

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いずれも「広笑府」巻五(口腹篇)より。「広笑府」は明の墨憨斎主人(大文人・馮夢龍の号である)が、広く笑い話を集め纂したもの。まず「笑府」を編纂したので、それよりもたくさん集めた、ということで「広笑府」と名づけたものらしい。

読んでも楽しくない? そうでしょうね。みなさん、ようく考えると自分のこと言われているように感じるでしょうからね・・・。

 

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