平成22年10月23日(土)  目次へ  前回に戻る

今日は満月でした。満月を見ると、おれは○んだ6号のことを思い出す。あれも秋の終わりだったな。

―――サヨウナラ。ミンナ、アリガトウ。おれガコウナルノハミンナノセイヂャナイ。にんげんノセイサ。にんげんガイヤデイヤデシヨウガナインダ・・・。

そう言い遺して肝冷斎6号は、今夜の月のようにまんまるな火口に身を投げたのだ。

・・・そういえば、3号が逝ったのも十月だったな・・・。8号は11月だったか・・・。

おれはグラスを傾けながらつぶやいた。

・・・おれはいつになるのだろうか・・・。

おれは何号か、だって? さて・・・。おれたちは何の順番で番号がついているんだっけ・・・。

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しかし今日のところはハコさんのファーストライブLPを入手できたので、思いとどまったのだった。現在再生中。

このところかなりつらいので、今日は楽しいお話をご紹介することにしましょう。どちらも月夜の物語らしい・・・。

@    張翁

禾陽に流賊が攻め込んできたときのこと、張翁(張のじいさん)は行商に出かけていて、見も知らぬ旅の僧侶と知り合って親しくなったが、夜中に流賊に遭遇し、あわてて僧侶と一緒にお堂の中に逃れた。

そこにはすでに先に避難した一団がいて、みな暗闇の中、息を潜めて賊が通り過ぎるのを待っていた。

しかし、賊の一隊が堂の中にひとがいることに気づき、白刃を引っさげて略奪に入り込んできたのである。

堂内のひとびとは阿鼻叫喚しながら、逃げ出した。

白刃のもとに倒れた者もいた。堂内から逃げ出したところで、外にいた一団に嬲り殺された者もいた。闇に紛れて何とか近くの林の中に逃げ込み、流賊の手から逃れた者もいた。

張翁は最後のグループで、何とか林の中に逃れ、流賊たちの手から脱がれ出すことができたが、気づいてみるとあの僧侶の姿は見えない。

疾呼僧不応。

疾呼するも僧応ぜず。

あわてて僧の名前を呼んでみたが、返事はない。

翁、哭以為遇賊死矣。

翁、哭して以て賊に遇いて死せりと為せり。

張翁は、しのびきれずに声を上げて泣いた。僧は賊にやられて死んだのだ、と考えたからである。

林の中に、雲間から出た月の光が差し込んできた。その光の中で、

忽自視其衲笠皆僧物也。

忽ち自ら視る、その衲笠(とつりゅう)みな僧の物なるを。

ふと見てみると、引っつかんできた荷物は僧の衣と笠であった。

「ということは・・・」

復大哭曰、僧則在是矣、我安在哉。

また大いに哭して曰く、「僧はすなわちここにあり、我いずくにありや」と。

また大声を上げて泣いた。

「僧はなんとか逃げ出すことができたが、わしの方が見当たらぬではないか」

と。

ちゃんちゃん。

A 善睡(よく眠るやつ)

楚の湘水のあたり(一昨日に杜甫がうろうろしていたあたりですね)によく眠る子どもがいた。

あるとき、その子どもの母、用事があって隣村に泊りがけで出かけることになり、その子に、

「瓜の実が大きくなっているから、あれを盗まれないように気をつけておくんだよ」

と言いつけていった。

「わかりまちた。盗まれないようにようく見張っておかねばなりません」

子どもは、夜になっても瓜畑の傍を離れなかった。

夜更け、瓜どろぼうがやって来た。まるく実った瓜をいくつか袋に入れる。

ふと見ると、月明かりの下、見張りの子どもが「ぐうすか」と眠っているのを見つけた。

瓜どろぼうはいたずら心を起こして、にやりと笑うと、その子どもの

剃髪舁入僧寺。

髪を剃りて僧寺に舁(か)き入る。

髪の毛を剃った上、お寺に担ぎ入れて行った。

翌朝、母親が帰ってきて、瓜も子どももいなくなったのを見つけた。

「まあ、どうしましょう・・・」

よくよく見ると、瓜畑の傍に何かを引きずった跡がある。

踪迹至寺。

迹を踪(あとづ)くるに寺に至る。

その迹をたどっていくと、お寺に着いた。

お寺に入ってみると、驚くべし、その縁側で子どもは

尚鼾呼如雷。

なお鼾呼(かんこ)すること雷の如し。

まだいびきをカミナリのようにかいていやがったのだ。

母怒痛撻之至醒。

母、怒りてこれを痛撻するに、醒むるに至る。

母親が怒って、子どもをぼこぼこに引っぱ叩いたところ、ようやく目を覚ました。

そして、

忽自尋其首無髪、訴曰、失瓜者乃寺内沙弥、非我也。

忽ち自らその首の髪無きを尋ね、訴えて曰く、「瓜を失う者はすなわち寺内の沙弥(しゃみ)なり、我あらざるなり。」と。

すぐに自分の頭の髪の毛が剃られてしまっているのに気づき、母親に訴えていうには、

「ウリを盗まれたのはお寺の小僧さんなのでちゅ、おいらではありませんのでちゅ!」

と。

ちゃんちゃん。

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清・賀子翼「激書」より。外形にとらわれて自らを忘れてしまう――というなかなか深い物語のような気もしますが、これは一応「笑い話」として分類されているらしい。チュウゴクのひとはほんとにこんなお話を読んで、

「わはははは」

「これはおかしい」

「おほほほほ」

と笑えるものなのでしょうか。

両件とも笑い話というより、張翁も子どももよく生きていたものだと感心しますけどね。大陸人民の強靭さを伺い知ることができよう(笑)。

※ドラゴンズおめでとうございます。やはり日本シリーズにはリーグ優勝チームが出るものだ、と思っております。まあパのホークスはライオンズからその地位を横取りしただけのようなものでしたけど。和田さんサヨナラヒットを記念して「柳ケ瀬ブルース」でも聴くか。しかも藤圭子さんのバージョンだぜ。かっこいい。

 

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