平成22年10月22日(金) 目次へ 前回に戻る
また明後日には月曜日に慄きながら眠れぬ夜を迎えるのか、と思うと、今夜も眠れそうにないぜ。
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「風俗通義」を開くに、
世間亡者多有見神。
世間の亡者、多く神を見(あら)わすあり。
世の中では死んだひとが不思議の姿を見せることが多くあるのである。
と、重大な命題が目に飛び込んでまいりました。
どういう姿かというに、死んでいるのに
語言飲食。其家信以為是、益用悲傷。
語言飲食す。その家信じて以て是と為し、ますますもって悲傷す。
話をし、飲み食いするのである。その家のひとたちはまことに死人が活動しているのだと思って、哀しみの心を増すのである。
例えば、このようなことがあった。
後漢の時代、南陽・新野(河南)のひとで、司空の官にまで登った来季徳は、死後、三年間のもがり(本葬の前に死体を仮に安置して祀ること。その間に完全に腐っていくのである)の最中に、
忽然坐祭床上。
忽然として祭床の上に座す。
突然、お供え物を置いておく台の上に座っていたのである。
腐敗は進んでいたが、確かに季徳である。
彼は命じて、家の者を棺の前に整列させた。
孫児婦女、以次教戒、事有条貫、鞭撻奴婢、皆得其過。
孫児婦女に次を以て教戒するに、事に条貫あり、奴婢を鞭撻するにみなその過ちを得たり。
子や孫、その嫁やむすめたちに対して、ひとりひとり説教した。言っていることはたいへん説得力がある。それから、下男下女をしかりつけて鞭打ったが、その理由は隠していたことも含めてみな当たっていた。
それらをすますと、
「よし、料理を持ってこい」
と命じ、
飲食飽満、辞訣而去。
飲食して飽満し、辞訣して去れり。
はらいっぱいになるほど飲み食いした後、別れの言葉を述べて、棺の中に入って行った。
のである。
家人たちは驚き恐れたということであるが、最初に死んだときほどの哀しみは感じなかったそうである。
―――――その後―――――
如是三四。
かくの如きこと三四なり。
このようなことが三度、四度とあった。
腐敗はどんどん進んでいるようである。そして、毎回説教したり、鞭打ったりしていくのである。家人たちはだんだんといやになってきた。
ところがあるとき、いつものようにたっぷり説教を垂れた後飲み食いをしているうちに、
飲酔形壊、但得老狗。
飲酔して形壊れ、ただ老狗を得たり。
酒に酔いつぶれて姿が変わり、老いたイヌに変じてしまったのだった。
そこで、家人たちは
便撲殺之、推問里頭、沽酒家狗。
すなわちこれを撲殺し、里頭に推問するに、沽酒家の狗なり。
ただちにこれを殴り殺して、村の中で訊ねてみたところ、酒屋のイヌであることが判明した。
最初からイヌだったのか、最初のうちはホンモノだったのかは判然としない。
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「風俗通義」巻九より。「太平広記」にも採用されている有名なお話です。この話ぐらい知っていないと、就活、婚活で不利になる!かも。