平成22年10月20日(水) 目次へ 前回に戻る
奄美でたいへんな雨らしいです。何をしてあげられるわけでもありませんが、がんばれ。
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さて。ボクはみなさんと違って、ニンゲンが嫌いです。ニンゲンは怖ろしいからです。何をしてくるかわかりません。
ニンゲンの怖ろしさを描いた寓言があったので読みます。
むかしむかしのことですが、
人有亡鉄者、意其隣人之子。
人の鉄を亡(うしな)う者有り、その隣人の子を意(おも)う。
鉄製の斧を失った者があった。燐家のむすこが盗んだのではないかと思われた。
まだ鉄器が貴重な時代であった。
隣家のむすこを見てみる。
視其行歩、窃鉄也。顔色、窃鉄也。言語、窃鉄也。動作態度無為而不窃鉄也。
その行歩を視るに鉄を窃むなり。顔色も鉄を窃むなり。言語も鉄を窃むなり。動作態度、鉄を窃まずと為す無きなり。
その歩く姿を見ると、どうも鉄器を盗んでいるようである。顔色をみてみるとやはり盗んでいるようである。言葉遣いも盗んでいるような言葉遣いであるし、その一挙一動何から何まで鉄器を盗んでいない、とは思えない様子なのだ。
やはりあいつやで・・・。
証拠や。証拠さえあれば取っ捕まえてひどい目に合わせてやれるんや・・・。
証拠なんか要らないんちゃうやろか。だって、あいつが盗んだことはもうほぼ明白なんやから・・・。
よっしゃ。明日や。明日こそは捕まえて、正直に白状するまで締め上げてやるんや・・・。
と思っていましたところ、
俄而掘其谷而得其鉄。
俄にしてその谷を掘るにその鉄を得たり。
家の汚物入れの穴を掃除していたら、そこから突然、鉄の斧が出てきたのである。
どうやら誤って他のゴミと一緒に捨ててしまっていたものらしい。
さて、
他日復見其隣人之子、動作態度無似窃鉄者。
他日またその隣人の子を見るに、動作・態度、鉄を窃む者に似る無し。
別の日にまた例の隣家のむすこを見かけたが、その一挙一動、どこにも鉄器を盗んだようなふうは無かった。
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「列子・説符篇」より。
いろいろ考えさせられるいい話ではありませんかあ。
社会の中で暮らしていると、誰かを疑ったり誰かに疑われたりして、だんだん絶対あいつだと思い込んだり思い込まれたりして、いずれついにバクハツして突然斬りかかられたり斬りかかったり・・・しないとも限りません。わしのように社会から逃れて、山中の洞くつに暮らしている者でも貯めておいた食い物が無くなっているとクマが盗んだかネズミが盗んだかウジムシかと疑ってぎろぎろと睨んでしまいますが、実はあんまり腹が減って自分で夜中に眠ったまま食べている、ということがあったりしますからね。と思わざるを得ないぐらい、いつの間にか体重が増えていたりしますからね。最近ほんとにまた太ってきている。動くの苦しい。くそ、誰のせいだ。おれは悪くないのだから、誰かのせいにちがいないのだが、そいつは誰だ・・・。