平成22年9月22日(水) 目次へ 前回に戻る
本日は皓々と、月が昨日にも益して美しかった。今日こそ中秋のアレでしたね。それにしても暑かった。
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清の道光年間、華北のペキン郊外。
(旧暦)八月十五日の夜に、こどもたちが歌いながら各家を訪ねる。
彼らの歌う「わらべうた」にはいう、
八月十五月児円、西瓜月餅供神前。
八月十五、月児円(まど)か、西瓜・月餅、神前に供えよ。
八月十五夜、お月さんまるい、スイカと月餅、かみさまどうぞ。
「西瓜」(スイカ)がシナ本土に入ったのは五代のとき、胡嶠というひとがウイグルを征伐したときに持ち帰ってきたのだ、といい、始めは華北の地にのみあったが、明のころには
南北皆有、而南方者味稍不及。
南北みな有り、而して南方のものは味やや及ばず。
南部にも北部にもあるようになったが、南方のものは少し味が悪いのである。
という。(「本草綱目」)
ゲンダイの感覚では陽暦八月の初めごろの盛暑に食うイメージであるが、「本草綱目」ではその実が熟するのは七八月だ、とされているので、旧暦の八月、ちょうど今ごろにお月さまの前に捧げられてもおかしくないものだったのでしょう。
なお、我が国には慶安年間に隠元が隠元マメや黄檗宗と一緒に持ち込んできたのだという。
さて、またペキン郊外に戻ります。今度は老人たちが、空の月が雲に隠れたのを見て言い合っている。
八月十五雲遮月、正月元宵雪打灯。
八月十五、雲の月を遮れば、正月元宵、雪の灯を打つ。
八月十五夜に雲が月を隠していたら、(次の年の)正月上元(十五日)の元宵節の灯火に雪が降りかかる。
元宵節には各家や集落で競いあってチョウチンを出し合い、それを見物して歩き回る夜祭が開かれる。旧暦ですからゲンダイ的には二月の末あたりの季節ですが、八月十五日の空が曇りだと、その元宵節の晩は雪になる、というのである。
いわゆる天候占いの一種ですが、
「それは当たるのですかな」
と老人たちに問うと、老人たちは顔を見合わせて笑い、
有応有不応。
応あり応ぜざるあり。
「当たるときも当らないときもありますなあ」
と答えてくれた。
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道光年間の習俗については「郷言解頤」巻一より。