平成22年9月16日(木) 目次へ 前回に戻る
明日あたりから第二次革命がはじまるのかな?
・・・という問題意識と以下の記述には直接の関係はありません。
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清末のころのことわざに
牽牛下井、放虎帰山。
牛を牽いては井に下し、虎を放てば山に帰る。
というのがあります。
ウシに泉で水を飲ませてやろうと思って「こっちへ来い」と引っ張る。せっかく水を飲ませてやろうとするのだが、こちらが引っ張れば動かなくなるものだ。
トラを捕まえた後、放してやると、トラは放っておいても山に帰ってしまう。気ままにさせれば無理強いしなくても行きたいところに行ってしまうものだ。
いずれも、ウシ・トラだけでなく、ニンゲンもそうだ、ということで、無理強いするよりは放っておけ、ということらしい。
このコトワザに、あるひとが難癖をつけて、言う、
―――トラは山から下りてきて、人を殺害するなどの悪さを仕出かす。もし捕まえたならすぐに殺してしまうべきで、これを山に帰らせてしまう、とは、ドウブツに優しいように見えて、後で襲われるかも知れないひとのことなんて考えていない行為だ。なんと言う不人情なことであろうか。
北荘素史・王有光は言う、
そうではない。
山の中にトラは多い。一頭を殺したところで、二頭目、三頭目が現われるばかりである。されば、ひとたるものは
惟修其藩籬、固其牆壁、謹其出入。
その籓籬を修め、その牆壁を固くして、その出入を謹むのみ。
家の垣根を直し、壁や門扉を頑丈にして、出かけたり戻ったりしたときには戸締りに用心すればいいのである。
そうすればトラがわれらをどうすることができようか。
吾願人勇以防虎、知以避虎。即放虎亦不失其為仁。
吾願わくば人は勇以て虎を防ぎ、知以て虎を避けんことを。即ち虎を放つもまたその仁たることを失わざらん。
わしが期待するのは、ニンゲンが勇気を出してトラの来襲を防ぎ、知恵を絞ってトラを避けることである。そうすれば、トラを放してやったとしても、後で襲われるかも知れないひとのことを考えない不人情者よ、とのそしりを受けることは無くなるであろう。
やっぱり放っておけばいい、ということらしい。
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「呉下諺聯」巻一より。こんだけ嫌われるとは、トラは阪神のようだな、と思いましたが、思い過しかな。今となっては一頭殺したら二頭目、三頭目はもういない、ぐらい絶滅危惧種になってしまってますけどね。