平成22年7月29日(木) 目次へ 前回に戻る
○あんまりにもどうでもいいことですが、釜でメシを炊いたとき、
鍋底之米結成凹。其色黄、其声脆、謂之鍋焦。
鍋底の米、結んで凹を成す。その色黄、その声脆(き)、これを鍋焦と謂う。
釜の底に米が、へこんだ形で結集することがある。黄色(茶色に近い色か)で、こすると「きいきい」という音がする。これを一般に「おこげ」というのである。
ペキンの近郊では「おこげ」のことを
格炸(カクサツ)
というが、「おこげ」を使って醸した酒を
鍋巴酒
といい、年末になると仏寺や道観で「おこげ」を油で炒めて年送りの贈り物にするところも多い。
○もっとどうでもいいことですが、ペキン近郊では、小腹が空くと、
「蝌蚪子(かとし。オタマジャクシ)でも食うか」
という会話がよくなされる。江南の出身者などはびっくりするようだが(←自分たちはカエルを食べているくせに)、これは
麦、菽二屑各半、和麪、用木牀鉄漏按入沸湯中、熟而取出。
麦、菽二屑おのおの半ばし、麪(べん)に和して、木牀鉄漏を用いて沸湯中に按入し、熟して取り出だす。
小麦と豆の粉を半分づつ、麪(むぎこ)と混ぜて粘土状にしたものを、木で枠組みを作った鉄の漏斗(じょうご)から熱湯中に落とし、十分熱してから取り出す。
これに調味料をかけて食べるもののことをいうのである。
蝌蚪子者、象形也。
蝌蚪子というは象形なり。
「おたまじゃくし」と呼ぶのは形が似ているからである。
なお、「格豆子」というひともいるが、これは「蝌蚪子」の音がなまったものであり、同一物である。
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これはペキンに近い田舎の清の後半期(道光二十九年(1849)にこれまでの七十年のことを思い出して書いたものだそうです)の風俗をいろいろ記した瓮斎老人の「郷言解頤」という本に書いてあったことです(巻四)。他にもいろいろ書いてあり、みなさんに教えてあげたいのです。しかし明日も会社なので、ここまでです。なお、○ごろには会社を○○るので、そしたら無限に教え続けてさしあげます。
瓮斎老人はどういうひとかはっきりしないのですが、東洋が世界に誇る大知識人・周作人大先生が「李光庭といい、樸園と号したひとだ」と考証してくださっています。