平成22年5月17日(月)  目次へ  前回に戻る

お花畑の思い出・・・

今日は昨日に続きまして、オロカモノが好きそうなお話をいたしましょう。大サービスでございますよ。

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劉政は不思議な術を知っており、

「ではお見せしましょう」

とひとびとの前で、

能以一人分作百人、百人作千人、千人作万人。

よく一人を以て百人と分作し、百人を千人と作し、千人を万人と作す。

一人のひとを、百人に分身させ、百人を千人に分身させ、千人を万人に分身させることができた。

こういう文章を読むと、「なぜ一人については×100なのに、100人・1000人についてはそれぞれ×10が限界になるのだろうか」、気になってしようが無くなってしまうのですが、ここは「詩的表現」だと考えて深く考えるのは止めておきます。

劉政はまた、

「はいはい、こういうこともできますぞ」

と言うて、

能嘘水興雲、聚壌成山、刺地成淵。

よく水を嘘(ふ)きて雲を興し、壌を聚めて山を成し、地を刺して淵を成す。

水を吹き出して雲を湧かせることができた。また、土を集めてきてあっという間に山を作ってしまうことができ、地面に棒切れを差し込んで掘り返し、あっという間に淵を作ってしまうこともできた。

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術士の孫博はある逃亡者を追っていたが、その男は軍隊に逃げ込んでしまった。

孫博はその軍隊が山中の道を通りかかるのを待ち、

「ふほほ、お許しあれ」

とうそぶくと、ふところより

以赤丸投軍中、須臾火起。

赤丸を以て軍中に投じ、須臾にして火起く。

赤い玉を出してきて、軍隊の列に投げ込んだ。すると、たちまち巨大な火柱が上がった。

隊列は混乱し、その中から火がついた男が転がり出してきたが、これこそ逃亡していた男であった。

孫博は印を結んで「えいや」とその男を見えない縄で縛り付けると、

「ふほほ、失礼いたしたの」

と言いながら、今度は

投以青丸、乃滅。

青丸を以て投ずれば、すなわち滅す。

青い玉を出して隊列に投げ込むと、すぐに火柱は消えてしまった。

ということであった。

この孫博はまた、

能引鏡為刀、屈之復為鏡。

よく鏡を引いて刀と為し、これを屈してまた鏡と為す。

鏡をびよよ〜ん、と引っ張って刀にしてしまい、今度はその刀をぎゅぎゅっと畳みこんでまた鏡にしてしまうことができた。

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白石先生といわれた道士は、なぜそう呼ばれたかと言いますと、

煮白石為糧。

白石を煮て糧と為す。

白い石を煮て主食にしていたからである。

別の仙人が

何不服薬仙去。

何ぞ服薬して仙去せざる。

どうしてそんなものばかり食っているのじゃ。おまえなら仙薬を服せばすぐに仙界に行けように。

と問うと、

天上多至尊、相奉事、更苦于人間。

天上には至尊多く、相奉じて事(つか)う、さらに人間より苦し。

天上界には至って尊い方々が多くおられ、お互いに貴びあってお付き合いしていかねばならん。人間世界におるより面倒くさいではないか。

と答えたという。

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王遠は字を方平といい、かつて蔡経の家に居候をしていたことがあったが、あるとき、ふい、と行方をくらましてしまった。

去十余年、七月七日来。

去ること十余年、七月七日に来たる。

それから十余年、ある年の七月七日に突然やってきたのである。

そのとき、王遠は大将軍のように行列を引き連れていた。

持玉壷十二、皆以蠟封其口。

玉壷十二を持し、みな蠟を以てその口を封ず。

玉製の壷を十二個みやげに置いて行ったのだが、これらはすべてロウで口を封じてあった。

また、以前、蔡家の隣に住んでいた陳尉に当てた書状を預けて行った。

王遠が行列を引き連れて去って行った後で、玉壷の口を開いてみると、香しい香りがたちこめただけで、中はすべて空っぽであったし、陳に当てた手紙は、

其書廓落、大而不工。

その書は廓落として、大にして工ならず。

文字は堂々として大きく、のびやかであった。

が、何と書いてあるのか、どうしても読めなかった。

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すべて晋・葛洪撰「神仙伝」より。まだまだ続きますが、疲れてきたので、これで終わり。

どうですか?みなさん、この手のはお好きでしょう? え? こんなのオモシロくない?

・・・そうですか、この類のお話、わたしはたいへん好きなのですが・・・。

 

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