平成22年5月15日(土) 目次へ 前回に戻る
寒くなったり暖かくなったり変な気候でございますなあ・・・
晋の時代のことでございます。
王羲之の子どもたち三人が宰相の謝安のところにやってきた。
子猷、子重多説俗事、子敬寒温而已。
子猷、子重は多く俗事を説き、子敬は寒温のみ。
徽之(字・子猷)と操之(字・子重)はいろいろ世間のことを話したが、献之(字・子敬)は時候のあいさつだけで口をつぐんでいた。
三人が帰った後、同席していた客が謝安に問うた。
向三賢孰愈。
向(さき)の三賢、いずれか愈(まさ)れる。
さきほどの三兄弟、いずれも賢者と名高うござるが、特にどなたが優れておられると思われますかな。
謝安はにやりと笑いまして、
「易・繋辞伝下に何とありますかな?」
客人、得たりと膝を打った。
「なるほど、なるほど」
繋辞伝下に曰く、
吉人之辞寡、躁人之辞多。
吉人の辞は寡(すく)なく、躁人の辞は多し。
よきひとは言葉が少なく、地に足のつかぬひとは言葉が多い。
最も言葉少なであった子敬が抜きん出ることになろう、と言うたのである。
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「世説新語」品藻第九より(第74則)。
わしも言葉少なにしてほめてもらいたいので今日はこれだけで終わり。今日もたいへんなひと(たとえば宮崎の種牛問題に関わっているひとなど)がたくさんいるのに、申し訳ないことです。