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むかしむかし。シナに、とあるひとがおりましたんじゃ。
このひと、
有大臭。
大臭あり。
たいへんひどい体臭があった。
このため、
親戚、兄弟、妻妾、知識無能与居者。
親戚、兄弟、妻妾、知識のよくともに居る者無し。
父母、兄弟、妻妾、知合いの誰も一緒にいられるひとがいないほどであった。
このひと、ついに
自苦而居海上。
自ら苦しみて海上に居る。
自らこのことを苦にして、ただひとり、東の方、海のほとりに移り住んだ。
ところが、
海上人有説其臭者、昼夜随之而弗能去。
海上人のその臭いを説(よろこ)ぶ者あり、昼夜これに随いて去るあたわず。
海のほとりに住む人の中には、そのひとの体臭を好むひとがいて、昼も夜もそのひとの側に寄ってきて、離れようとしないのであった。
と伝わっておりますのじゃ。どっとおはらい。
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以上。
「呂氏春秋」遇合篇にあるお話である。ひとには好き好きがあるとか、誰にでも相応の仲間がいる、といったことの比喩に使われるお話らしいのですが、昼も夜も離れようとしない「海上人」に何かしら異常なものを感じざるを得ませんね。ベイスターズやカープのファンを客観的に見るとこんな感じになるのかな・・・。