平成22年4月10日(土)  目次へ  前回に戻る

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

むかしむかし。シナに、とあるひとがおりましたんじゃ。

このひと、

有大臭。

大臭あり。

たいへんひどい体臭があった。

このため、

親戚、兄弟、妻妾、知識無能与居者。

親戚、兄弟、妻妾、知識のよくともに居る者無し。

父母、兄弟、妻妾、知合いの誰も一緒にいられるひとがいないほどであった。

このひと、ついに

自苦而居海上。

自ら苦しみて海上に居る。

自らこのことを苦にして、ただひとり、東の方、海のほとりに移り住んだ。

ところが、

海上人有説其臭者、昼夜随之而弗能去。

海上人のその臭いを説(よろこ)ぶ者あり、昼夜これに随いて去るあたわず。

海のほとりに住む人の中には、そのひとの体臭を好むひとがいて、昼も夜もそのひとの側に寄ってきて、離れようとしないのであった。

と伝わっておりますのじゃ。どっとおはらい。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

以上。
「呂氏春秋」遇合篇
にあるお話である。ひとには好き好きがあるとか、誰にでも相応の仲間がいる、といったことの比喩に使われるお話らしいのですが、昼も夜も離れようとしない「海上人」に何かしら異常なものを感じざるを得ませんね。ベイスターズやカープのファンを客観的に見るとこんな感じになるのかな・・・。

 

表紙へ  次へ