世の中にはいろんな風俗があるのである。
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南方の国は暑い。
これは男性には適切ではないが、女性には適切なのである。
なぜかといいますと、ご承知のとおり、宇宙生成の原理は陰と陽の二つの気の運動に基づくわけでありますが、この際、
・陰と陽はお互いに求め合い、それぞれの足らざるを補いあう関係にある
・一方、陰と陰、陽と陽同士は反発しあう
という定理がある、ということもご承知のとおりである。
さて、これまたご承知のとおり、男は陽、女は陰の気を享けて生まれ育つわけであり、南方は暑くて陽の気がたいへん多い。したがって、陽の気を持つ男はこれを補ってくれる陰の気が少なく、陰の気を持つ女には、これを補ってくれる陽の気がたくさんあることになり、よって女性には適切になる、という道理なのである。
だから、南方の国では、たいてい
男子身形卑小、顔色黯惨。婦人則黒理充肥、少疾多力。
男子身形卑小にして顔色黯惨たり。婦人はすなわち黒理にして充肥し、疾少なく力多し。
男はからだが小さく、顔色は黒ずんで憂鬱そうである。これに対し女性は黒々として肌理張り、でっぷりと肥えて、病気もせず力も強いのである。
・・・・・・・・ここまで、もしもワタシが考えて書いたのであれば問題があったらまずいのですが、すべて宋の周去非、字・直夫が「嶺外代答」(巻十)の中で書いていることなので、もし問題があっても文責はそちらにありますのでそちらに文句を言ってください。
周氏によればさらに、
都市や市場で、物資を背負ってきて販売しているのを見るにたいてい女性である。
ところで、広西の人民どもを見るに、
皆一夫而数妻。
みな一夫にして数妻なり。
夫一人に妻数人、という生活をしておる。
これらの妻たちは、みな上述のように自ら物資を背負って売買し、この一夫を養っているのである。では夫は何をしているかというと、
終日抱子而遊、無子則袖手安居。
終日、子を抱きて遊び、子無きは手を袖にして安居す。
一日中、こどもを抱っこしてふらふらしており、こどもの無い場合は袖に手を入れたままぶらぶらしているのである。
夫とは名のみで、「無所帰」(帰るところ無し)と呼ばれないだけなのである。(独身者はそう呼ばれるらしい)
妻どもは茅葺の家を作ってあちこちに別れて暮らしている。夫はその間を往来するに任されており、妻同士は没交渉であって、妻どもの間でお互いに比べあったりすることはない。
それはたいへんよいことのようですが、夫が酋長など権力者であると、
生子莫弁嫡庶、至于仇殺云。
子を生ずるも嫡庶を弁ずるなく、仇殺に至るという。
こども同士の間に正妻の子だとか側妻の子だという区別が無く、(またお互いの親愛など無いので)ついには争いあって殺しあうに至るものだそうだ。
ちなみに酋長クラスだと、一般に一夫十妻だそうである。
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涼しくなってくると南の国で暮らしたくなってきますが、得失はよく考えねばなりませんよ。