わたくし(王阮亭)は以前、四川に出張で行ったとき、油井(油田)と火井(天然ガス田)@を見ました。有用なものが自然に出てくるのですから便利なものがあるものだなあ、と思いました。
あるいは、元の時代にアラビア半島まで使いした劉郁は、殢掃児(テイソール)城の近くで塩山(岩塩の山)Aを見たそうです。海水から苦労して塩をとらなくていいのだから便利なものですなあ。
劉郁によれば、この岩塩というものは、
如水晶状。
水晶の状の如し。
水晶のような色・形・透明度になっておった。
と書きのこしております。(「西征記」)
また、近年(←もちろん清代の近年)、緬甸(メンデン。今のミャンマー)に使いした方邵村は「怡亭雑記」中に次のように記しています。
緬甸有糖樹、酒樹。
緬甸に糖樹、酒樹あり。B
ミャンマーあたりにはアメの木とサケの木があるのだ。
まず、「酒樹」というのはどういうものか。
こほん。(←方邵村先生の咳払いの音)
酒樹実如椰子、剖之皆酒。色瑩白而甘、能酔人。
酒樹の実は椰子の如く、これを剖(さ)くにみな酒なり。色は瑩白(エイハク)にして甘く、よく人を酔わしむ。
サケの木は、その実がヤシの実のようなである。しかし、その実を割ると、中から出てくる果汁は酒になっているのである。その果汁、色は白く輝きを持ち、味は甘く、アルコール度はかなり高い。
では、「糖樹」というのはどういうものか。
こほん。
糖樹細葉而柔幹、以刀刺其本、汁涓涓不絶、経一昼夜始止。色味如餳、食之令人飽。
糖樹は細葉にして柔幹、刀を以てその本を刺すに、汁、涓涓(ケンケン)として絶せず、一昼夜を経て始めて止まる。色味は餳(イ)の如く、これを食らえばひとをして飽かしむ。
アメの木は葉は細く、幹は柔らかである。刀でその幹の根元近くを刺すと、樹液がたらたらと流れ出てきて、なかなか止まらない。一昼夜ほどしてようやく止まる。(この樹液の)色・味は水あめそっくりで、これを食うとハラ一杯になる。
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王阮亭「池北偶談」巻二十七より。Bが一番便利というか直接に飲み食いできて一番いいと思われるのである。すなわち、やはりニンゲンは熱帯・亜熱帯に住むべく、そこから追い出された負け組みがわれら温帯なのだということであろう。