唐の崔玄亮というひと、洛陽の郊外を散歩していて、川のほとりで石ころを一つ拾った。
大きさは鶏の卵ほどで、黒く、表面には湿り気があって、何となく気に入って手に玩びながら歩いていたところ、
行一里余、砉然而破。
行くこと一里余、砉然(かくぜん)として破る。
六百メートルほど行ったところで、突然ぽきんと割れた。
「砉」(カク、コウ)は、「韻会」に「骨と皮肉が離れるときの音」という。
石の中からは、
有鳥大如巧婦、飛去。
鳥の大きさ巧婦の如きもの有りて、飛び去れり。
「巧婦鳥」は和名「ミソサザイ」、雀より小さい。
みそさざいほどの大きさの鳥が出てきて、いずくとも無く飛び去って行った。
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この話はこれでおしまい。唐・段成式「酉陽雑俎」巻四より。「物革」(物の変化)という項目に入っておりました。