ドウブツは、何かやらせようとするとやる気なしになっていくので、何もやらせないのがいいのだが。
もう疲れたニャー。
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おれ(肝冷ネコ)が明の時代に、どこかの大きなお屋敷にいたときのことニャー。
やさしいお嬢様がいたが、このお嬢様が科挙試験を受けようとしている貧しい若者と恋に落ちたんだが、なかなか世間の目がキビしくて会うこともできない。おれも協力したかったのだが、お嬢様付きのまだ小娘の女中・小英が、恋の橋渡しにせわしくハタラいていたんニャー。
その小英が、お嬢様の部屋から、お世話役の老下僕を遠ざけるため(若者が会いにくるからだ)に言った。
我是辛苦人、要睡去、你自把臘丸収去了。
我これ辛苦の人、睡去せんことを要む、你(なんじ)自ら臘丸を把して収去し了せよ。
あたしはもう疲れちゃって、眠ってしまいたいのよね。あなたは、自分でろうそくを持って引き上げてちょうだい。
正是、各掃自家門前雪、休管他家瓦上霜。
正にこれ、おのおの自家門前の雪を掃う、他家瓦上の霜に管するを休(や)めよ。
ちょうどぴったり、諺の
「みなさんそれぞれ自分の家の門前の雪を掃きのけなければいけません。よそさまの屋根の上の霜なんて気にしなくっていいのだから」
というやつね。
おほほ。
ぼかん。
「ニャーするンニャ!」
あら、こんなところにネコが寝ていたのね、蹴飛ばしちゃった。
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明六十種曲「蕉帛記」より。小英の言うとおり、よそさまのことなんかどうなってもいいので、おれはもう何もしないことにするニャー。シゴトはいやニャー。