令和2年7月15日(水)  目次へ  前回に戻る

よく考えたら東京ではお盆です。

今日は涼しかったですね。居眠りしたらだいぶん冷えた。夜になったら寒いぐらいである。

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清の時代のことです。

孫含中というひとが、浙江のとある県に赴いていたとき、所用があって

独行杭州城外荒村中、一望土冢累累。

独り杭州城外の荒村中を行くに、一望土冢累累たり。

たった一人で杭州城の郊外の荒れ果てた村を通り過ぎたことがあった。村は一望の限り、小さな盛り土(土墳)が累累と連なっていた。

お墓だらけの村なのである。

そんな中に、

見粉墻一家、即往索茶。

粉墻の一家を見、即ち往きて茶を索む

飾りのついた塀のある屋敷を一軒だけ見つけたので、その家の玄関先まで行って

「公用にて旅する者でござる。済まぬがのどが渇いて困っており、茶を一杯所望申す」

と呼ばわった。

何の答えも無かったが、しばらくすると、

一小婢挙竹椅出令坐、捧苦茶一盞飲之、須臾去、呼之不出。

一小婢、竹椅を挙げて出でて坐せしめ、苦茶を一盞捧げてこれを飲まし、須臾にして去りこれを呼ぶも出でず。

まだ幼い女中が一人、軽い竹の椅子を持って出てきて、手招きでそれに座れという。座ると黙って一杯のお茶を持ってきてくれたが、その苦さといったらなかった。

女中は孫が飲んでしまうと、その茶碗を片付けてすぐに家の中に入って行ってしまい、後は何度呼びかけても誰も出て来ないのであった。

「何やら冷たい村じゃのう」

と言いながら、ふと見上げると、

見門上一聯。

門上に一聯あるを見る。

門の上の左右に対聯があるのが目に入った。

曰く、

両口居山水之間、妻忒聡明夫忒怪。

四面皆陰磷所聚、人何廖落鬼何多。

 両口は山水の間に居り、妻は聡明に忒(たが)夫は怪に忒う

 四面みな陰磷の聚まるところ、人何ぞ廖落たりて鬼何ぞ多し

入口も出口も山と水の間、奥さまはわからず、旦那さまは合理主義者。

まわりはすべて青白い火の玉の集まる場所、にんげんはおまえだけ、霊魂はどうしてこんなに・・・

読み終わると、それまで何の物音もしなかったのに、あちらこちらから人の笑い声が聞こえ始めた。

「ここは長居してはならん場所らしいな。出口の方はわからず、か」

孫含中を後も振り向かずに、元来た方向に駆けだして、村から逃げ出したのだそうでございます。

後で聴くと、そこは群盗に襲われて全滅した村だったのだそうだ。

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「茶余客話」巻十二より。昼間でよかったです。いずれにせよ、今日みたいな寒い日には怪談さえ無用であろう。

 

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