令和2年6月11日(木)  目次へ  前回に戻る

シアワセそうだなあ。

そんなバカな、というようなことがいくつも起こってきました。

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紀元前の春秋時代のころですが、浮提(ふてい)の国という国があって、周王のもとに二人のニンゲンを派遣してきた。

この二人は、

神通善書、乍老乍少、隠形則出影、聞声則蔵形。

神通にして善書、たちまち老いたちまち少(わか)く、形を隠して影を出だし、声を聞かせて形を蔵す。

超能力をもち、文字を善く書き、年寄りになったかと思うと若者になり、姿を見せずに影だけを落としたり、声はするが姿は見えない、といった行動をとった。

彼らの手許には、いつも口径四寸ばかりの黄金の壺があって、

上有五龍之検、封以青泥、中有黒色如淳漆、灑地及石、皆成篆隷科斗之字。

上に五龍の検有りて、青泥を以て封じ、中に黒色の淳漆の如き有りて、地及び石に灑ぐに、みな篆・隷・科斗の字を成せり。

上に五頭の龍のマークが入っていて、青い泥でふたがされている。その中には純粋なウルシのような黒い液体が入っていて、これを地面や石に振りかけると、篆字や隷字やさらに古い科斗(オタマジャクシ)文字が浮かび出るのであった。

マジメに考えると、篆字は戦国末から秦代、隷字は漢代の文字なので、春秋の時代に存在した、というのは疑問です。しかしそんなバカな、という話なのでマジメには考えません。

二人は、この壺の黒い液体を使って、

記造化人倫之始、佐老子撰道徳経垂十万言、写以玉牒、編以金縄、貯以玉函、昼夜精勤、形労神倦。

造化人倫の始めを記し、老子の道徳経の十万言になんなんとするを撰むを佐け、玉牒を以て写し、金縄を以て編み、玉函を以て貯え、昼夜精勤して形労(つか)れ神倦む。

世界の創造やニンゲンの歴史の初めを記録したり、老子が「道徳経」約十万文字を書くのを助けて、これを玉のページに書き、黄金の紐を以て編綴し、玉の箱にしまい込み、昼も夜も精魂こめて働いて、見た目は疲れ、精神は倦怠した。

しかも、ついに

及金壺汁尽。

金壺の汁の尽きるに及ぶ。

黄金の壺の中の液体が尽き果ててきた・・・。

さて、そうしたところ、この二人はどうしたでしょうか。

続きは明日といたします。

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「拾遺記」より。そんなバカな、「老子」が十万字もあるなんて! 明日も「そんなバカな・・・」みたいな話ですよ。

 

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