「あれは不死鳥フェニックスでコケ。死んでも死なないので対猟師用の囮などに使える便利なやつでコケる」
コロナで外出自粛中です。そんな時こそ、ホントは朝礼でも使えるようなイカしたお話をご紹介したいんですが、そういうのはあまりストックが無いんで・・・。
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浙江・常熟の郊外に猟師がおって、
患病、医薬無効。
病を患い、医薬効無し。
病気になって、医者に診せたり薬を求めたりしたが、何の効果も無かった。
あるとき、近所で長い白鬚を伸ばした老人から、
「おまえさんはもう現世の悪が貯まって死なねばならない状態なのじゃ。それなら、一度死んでしまえばよいわけじゃな。
汝要病癒、須将稲柴扎一人。用汝平日所着衣冠披之、中蔵生年月日、掛在樹上、将鳥鎗打之。
汝、病の癒えんことを要むれば、稲柴を将(もち)いて一人を扎(さつ)するべし。汝平日の着るところの衣冠を用いてこれに披(き)せ、中に生年月日を蔵して樹上に掛け、鳥鎗を将いてこれを打て。
おまえさん、どうしても病気を治したいなら、稲藁を用いて人形を作り、それにおまえさんが普段着ている服や冠をつけさせて、中に生年月日を書いた札を入れて、木の上に懸けるんじゃよ。そして、火縄銃でこれを撃ち抜くんじゃ。
そうすると、身代わり(の人形)が死んで、
便可癒也。
すなわち癒ゆるべし。
おまえさんはきっと治るぞ」
ホントかなあ。半信半疑ですが、一度試してみようと考えた。そこで、
告其子、命如法行之。
その子に告げて、命じて法の如くこれを行わしむ。
息子にも説明して、いわれたとおりに実行できるよう手伝わせた。
人形が出来たので、木立に行き、それを樹上に懸けて、息子に銃を撃たせることにした。
「ようく狙えよ」
「あい」
「よし、いまだ!」
ずどん。
「うぎゃー!!」
詎鳥鎗一発、大叫而絶。
詎(なん)すれぞ、鳥鎗一発、大叫して絶せり。
どういうわけであろうか、火縄銃が発射されると同時に、後ろにいたおやじが絶叫して、そのまま死んでしまった。
息子はおやじに教えた老人を探し出して復讐しようとしたが、近所の誰もそんな人物を知らなかったのであった。
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「履園叢話」第十七「報応」より。肝冷斎はチャイナの「小説」の類を読んでいるうちに、チャイナの人民と同レベルの人間になってしまっているので、こういう話が意外とオモシロく感じるんです。ああいいなあ。シビレルぜ。 え? 何もオモシロくないですか? 「報応」篇に入っているので、本来は猟師がたくさん鳥獣を撃ったので「報いを受けたのだ系」の怪談なんだと思うのですが、怪談だか笑い話だかなんだかわからないものになっていて、本来救いようのない話のはずなのに、何やらニヤニヤしてしまいませんか。落ちさえつければコントになりそうです。
では、こちらはどうでしょうか。
―――同じく常熟の郊外でのことだが、須某というひと、ウシの舌が好きで、近所でウシが殺されるごとに、
必割其舌食之、以為美味。
必ずその舌を割きてこれを食らい、以て美味と為せり。
必ずそこに行って舌を切ってもらい、これを食って「美味い美味い」と喜んでいたのであった。
彼の家では、
将刀安置門上方。
刀をもって門の上方に安置す。
不意のことに備えるため、家の門の上に刀を吊るしてあった。
ある日、その門をくぐったところで、
忽聞二鼠相争。
忽ち二鼠の相争うを聞く。
なにやら二匹のネズミがケンカしているらしい物音が聞こえた。
「なんだなんだ?」
仰面看之。
仰面してこれを看る。
何が起こっているかと見上げたところ―――
刀落其口、断舌死。
刀その口に落ち、舌を断じて死せり。
吊るしてあった刀が(ネズミに噛み落とされたのであろうか)彼の口のところに落ちてきて、
「ぐわ」
舌が真っ二つに切れて、死んでしまった。
うーん。ダメですか。確かに牛タン美味いし。