本来なら、三人官女が春休みに入るぐらいの季節なのだが・・・。
とうとう外出を控えるように都知事から呼びかけがありました。「経済回さなきゃ」と思ってたんですが、あと二週間ぐらいはそんなことしている状況ではないらしい。
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五代のころ、浙江・天台で、
有樵者入山。
樵者の入山する有り。
あるキコリが山仕事に行ったんだそうな。
かなり山奥に入ったところで、向こうの峰に
見一道士。
一道士を見たり。
道士を一人見かけた。
「あんなところに道士さまが・・・」
と思っているうちに、その道士が飛ぶように早く近づいてきた。近づいてきて驚いたことには、その人は、
長丈余。
長(たけ)丈余なり。
身の丈が3.1メートル以上あったのだ。
褒衣広袖、面闊如盤、口眼倶偉、須髪銀色、担木履両束、可百来両。
褒衣・広袖にして、面は闊(ひろ)きこと盤の如く、口眼ともに偉、須髪は銀色にして、木履両束、百来両ばかりなるを担えり。
すそがふくらみ、袖のひろい服を着、顔は大きくて、大皿料理を並べる皿ぐらいあり、口も目もでかい。ヒゲや髪の毛は銀色で、木の下駄、一足で4キロ以上(一両≒40グラム)ありそうなのを肩に担っていた。
山道ではゲタは歩きにくいので、でかい一足を紐で結んで肩に懸け、裸足でのしのしと歩いてきたのである。
道士は、キコリの目の前までくると、
駐歩顧樵者久之。樵者恐懼前行不得、連拝之。
歩を駐めて樵者を顧みることこれを久しくす。樵者恐懼して前行を得ず、これを連拝するのみ。
ぴたりと止まって、キコリの方をじろりと見て、そのまましばらく時間が経った。キコリはもう怖くて恐ろしくて進むことできず、ただただ道士さまを拝むばかりであった。
やがて、
道士大笑数声、抛一栗子大如鷄卵、与樵者。
道士大笑すること数声、一栗子の大いさ鷄卵の如きを抛(な)げて樵者に与う。
道士さまは大笑いし、笑い止めてまた大笑いし、これを何度か繰り返した後、ニワトリのタマゴぐらいの大きさのあるクリの実を、ぽい、とキコリの方に投げて寄越した。
それから、
揮霍入天姥峯而去。
揮霍(きかく)に天姥峯(てんぼほう)に入りて去れり。
「霍」(かく)というのは、オモシロい字で、見てそのとおりなんですが、鳥に雨が降りかかるようす。すると鳥がぱっと飛び離れていきます。そのようすが非常にすばやい、というので、「すばやい」という意味になりました。「揮霍」と熟して、「にわかに」「あっという間に」の意です。
あっという間に天台山中の天姥峯の方に登って行き、見えなくなってしまったのである。
「はあ・・・。助かった?」
樵者啗其栗、旬日不思食。
樵者その栗を啗うに、旬日食(し)を思わず。
キコリは(ほっとして何気なく)そのクリを食べてみたところ、それから十日ほどの間、食べ物のことを考えなくてよかった。
満腹して、しかもその状態がずっと続いた、ということである。
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五代・陳纂「葆光録」巻一より。十日ぐらい外出自粛しているには、こんなクリがあればよい、ということである。十日間、一日に(おにぎり2ケ+牛丼並+牛丼大)を食べるとして、これを(400+700+900キロカロリー)=2000カロリーとすると、一クリ=2万カロリーぐらいである。十個も食えば三か月ぐらい寝て暮らせるとは、すばらしい。