令和2年3月14日(土)  目次へ  前回に戻る

今日は雪が降って寒かった。明日は暖かくなるという。だがもうすぐ平日だ・・・。

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酒でもかっくらって眠りにつくしかねえぜ。杜甫がうたった「飲中の八仙」のように・・・。

知章が馬に騎るは船に乗るに似たり。眼は花(かす)み井に落ちて水底に眠らむ。

皇帝陛下の文化顧問・賀知章さまは、ウマに乗ってお出かけしたが、出かける前から酔っ払っていてまるで舟を漕ぐようにゆうらゆら―――

目はかすみ、どぼんと井戸に落ちてしまって、水底に眠っているのを助け出された。

汝陽は三斗にして始めて天に朝すも、道に麹車に逢いて口に涎を流し、封を酒泉に移さざることを恨む。

皇帝陛下のお気に入りの甥っ子・汝陽王さまは、三斗ばかり飲んでからやっと朝廷に出勤するが、

道すがら酒を積んだ車に出会って口からよだれを流していた。

領地を酒の湧き出るという甘粛の酒泉に移してくれ、と願い出たが許されなかった。

左相が日興は萬銭を費やし、飲むこと長鯨の百川を吸うが如く、杯を銜(ふく)んでは聖を楽しみ賢を避くと称す。

皇帝陛下の信頼篤い左丞相の李適之さまは、毎日毎日一万銭を費やして宴会した。

その飲み方はでかいクジラが百の川の水を吸い尽くすかのように豪快で、

さかずきを口にしては清酒(「聖」)がいい、濁酒(「賢」)はいらん、と唱えていた。

宗之は瀟洒たる美少年、觴を挙げては白眼に青天を望み、皎(きょう)として玉樹の風前に臨むが如し。

貴公子の崔宗之は、すっきりとした美少年で、

さかずきを挙げながら斜に構えて空を見上げていた。

その様子は、きらきらとまるで玉でできた木が、風に揺られているようだった。

蘇晋は長斎す繍仏の前、酔中往往逃禅を愛す。

元将軍の蘇晋さまは、仏の姿を刺繍した掛け軸の前で長い時間おまいりしていたが、

実はお酒を飲んでばかりで、ときどき酔い覚ましに座禅していただけだった。

李白は一斗、詩百篇、長安市上の酒家に眠り、天子呼び来たれども船に上れず、自ら称す「臣は是れ酒中の仙なり」と。

詩人・李白は一斗飲む間に詩を百篇つくる、という天才で、

いつも長安市内の酒場で、酔っぱらっては眠っていた。

あるとき皇帝が新しい詩を作らせようと李白を呼んだが、その使者が来ても宴会用の船に乗りこむことができないほど酔っていて、

自分で言うには、「やつがれは酒中の仙人でござります」とさ。

張旭は三杯にして草聖と伝え、筆を揮って紙に落とせば雲烟の如きも、帽を脱し頂を露わす、王侯の前。
書家の張旭は三杯飲めば草書の天才だと世に言われ、

筆をふるって紙に落とすと、まるで雲かかすみのようにカッコいい字を書いていく。

けれどやんごとなき方々の前でも、帽子を脱ぎ捨てて髪の毛をあらわに見せる始末。(現代ならさしづめハダカで書くようなものです)

焦遂は五斗、方(まさ)に卓然、高談雄弁、四筵を驚かす。

焦遂というやつがいて、ほかには何の芸もないのだが、五斗飲ませると突然しゃきっとしてきて、

高尚な議論がとうとうと止まらず、周囲のひとは驚くばかり。

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唐・杜甫「飲中八仙歌」。カッコいいではありませんか。今日は寒かったけど東京はサクラの開花宣言、もうすぐ花見で「なに自粛してんだ」とみんな元気になると予想します。

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