あずきあらいくんを出迎える北の精霊コロポックル。人の言うことを聞かない上、加減を知らないのでかなり危険である。
今日も出勤してしまう。暑かった。もうダメだ。
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春秋の終わりごろ、紀元前6世紀と5世紀の間ぐらいのことですが、晋の国の有力者である知宣子(荀甲)が、息子の知瑶(ち・よう)を後継ぎにしようと考えていたところ、一族の知果(ち・か)が反対して、
「庶子の知宵(ち・しょう)さまの方がよろしいでしょう」
と進言した。
「いやしかし、
宵也很。
宵や很(こん)なり。
宵のやつは強情でひとの言うことを聞かんぞ」
「很」(こん)は「もとる」と訓じて、「強情」「人の言うことを聞かない」ような性格をいいます。「利かん気」と訳したいところですが、以後の議論でぴったりいかないので、「強情」にしておきます。
「いやいや、
宵之很在面、瑶之很在心。心很敗国、面很不害。
宵の很は面にありて、瑶の很は心に在り。心很なるは国を敗るも、面很なるは害あらず。
宵さまの強情さは、おもて面だけのことですが、瑶さまの強情さは心底からのものですぞ。心底から強情であるとその支配権を崩壊させてしまいますが、おもて面だけの強情さは何の害もありません」
「だが、瑶はいろいろできるやつじゃ」
「そのとおりでございます。
瑶之賢於人者五、其不逮者一。
瑶の人に賢(まさ)れるは五、その逮(およ)ばざるは一なり。
瑶さまが人に優れている点は五つございます。一方、ただ一つだけ、人に及ばぬところがございます。
美鬢長大則賢、射御足力則賢、技藝畢給則賢、巧文弁恵則賢、彊毅果敢則賢。
美鬢長大なるはすなわち賢れり、射御力足るはすなわち賢れり、技芸畢給なるはすなわち賢れり、巧文にして弁恵なるはすなわち賢れり、彊毅にして果敢なるもすなわち賢れり。
横髪が美しく、長くて見栄えがよい点が人に優れております。弓術・馬車の操縦について体力がある点が人に優れております。技芸についてことごとく具わっている点が人に優れております。コトバ使いがうまく説得力がある点が人に優れております。そして、強気で毅然とし、果敢で勇気がある点も人に優れております」
「何が人に及ばないのだ?」
如是甚不仁。
是くの如くして甚だ不仁なり。
「このように人に優れていながら、他人への思いやりが全くございませぬ。
以其五賢、陵人、而以不仁行之。其誰能待之。若果立瑶也、知宗必滅。
その五賢を以て人に陵(しの)ぎ、而して不仁を以てこれを行うなり。それ誰かよくこれを待せんや。もし果たして瑶を立つれば、知宗必ず滅びん。
五つの優秀さにおいて人を凌駕している。そのような能力を持って、思いやりなしに実行していく。そんなひとに対して誰が手加減してくれましょうか。もし結果的に瑶さまを後継者になさるようなら、知氏一門は滅亡いたしますぞ」
「うーん」
しかし知宣子は、最終的に
不聴。
聴かず。
その進言を取り入れなかった。
「しかたありませぬなあ」
知果別族于大史為輔氏。
知果、大史において族を別け、輔氏となれり。
知果は、記録官である大史のところに行って、自分の籍を知氏から抜いてもらい、新たに「輔氏」となった。
後、知氏之亡、唯輔果在。
後、知氏の亡びるや、ただ輔果のみ在り。
その後、知伯を継いだ襄子・瑶は、晋の国をほとんど支配し他の有力一族を滅ぼそうとして、返り討ちにあってしまった。これによって知氏の一族は誅殺されたが、輔果(ほ・か)は既に別の氏族となっていたので、彼とその子孫だけが生き残ったのである。
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「国語」巻十五・晋九より。賢いひとはやられるんですよ。わしらのようなもうダメな者は、もしかしたら生き残るかも知れぬ。ほんとにもしかしたら、なので期待しない方がいいですが。