某氏の家に飼われている「みゃあネコ」は目が見えないのだが食べ物は執念を持って手に入れる。有力者と繋がりを持とうと見境なく運動する者と、どちらがより賢く、どいらがよりオロカなのであろうか。
勤め人の方など社会の半分ぐらいの人が、明日から連休になるらしいです。おいらはコドモだから関係ないけど。
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世俗の方々は会社もたいへんなんだと思いますが、家庭もたいへんなんだと思われます。
紀元前六世紀も終わりのころなのですが、春秋の晋の国に、董叔という大夫がおられました。
董叔将取於范氏。
董叔、范氏より取らんとす。
范氏は当時の晋国でも最有力の一族、この「取る」は「娶る」、范氏の一族の女子と婚姻して、姻戚関係を結ぼうとすること。
董叔は、范氏からヨメをもらおうと考えた。
友人の叔向(しゅくこう)が言った、
范氏富、蓋已乎。
范氏富む、なんぞ已めざるか。
「范氏はたいへんな財産を持っているぞ。(そんなところからヨメをもらったら、おまえを見下してくるだろうから)どうしてやめないのか(やめた方がよいぞ)」
董叔は言った、
欲為繋援焉。
繋援を為さんと欲す。
「(有力者に)繋がりを作って、援(ひ)きあげてもらいたい、と思うのだ」
「それなら勝手にしろ」
ということで、董叔は范氏の当主である范献子の妹をヨメにもらいました。范氏は姓を祁といいますので、この女性を董氏に嫁いだ祁族の女ということから、当時の呼び方では董祁(とうき)と称します。
它日、董祁愬於范献子曰、不吾敬也。
它日(たじつ)、董祁、范献子に愬(うった)えて曰く「吾を敬せず」と。
しばらくして、ヨメに行った董祁は、兄の范献子にグチをこぼした。「あのひとは、わたしを大切にしてくれないんです」
「なんじゃとー!!!!」
献子執而紡於庭之槐。
献子、執りて庭の槐に紡(か)けたり。
「大切にするからヨメにいただきたい、というから大事な妹をヨメにやったのだぞ!」
范献子は怒りまして、(董叔を)縛り上げて、庭の槐(えんじゅ)の木の枝に引っ掛けた。
そこへ叔向が通りかかりました。
董叔は叔向に向かって声をかけた。
子蓋為我請乎。
子はなんぞ我がために請わざるか。
「おまえはどうしておれのために許しを願ってくれないのか(范献子に許してやるよう口を利いてくれ)」
叔向は苦笑して答えた。
求繋既繋矣。求援既援矣。欲而得之、又何請焉。
繋(つな)がらんことを求めて既に繋がる。援(ひ)かれんことを求めて既に援かる。欲してこれを得たり、また何をか請わん。
「繋がりを作りたいと思ってとうとう繋がれたんじゃないか。引きあげてもらおうと思ってとうとう引きあげてもらったんじゃないか。望んだとおりの状況を得て、また何を願おうというのか」
と言いながら、何とか范献子にとりなしてくれたのであった。
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「国語」巻十五・晋語九より。ああ怖ろしい。みなさん連休でもこんなツラい目に逢わなければならないのだなあ。おいらコドモでよかったなあ。