桜団子だけではなく、タコ焼き、肉団子も入っているので飽きが来ない。この食欲から脱け出す門はあるのか。
今日もしとしとと降る雨を見て、洞穴から一歩も出る気にならず、寝ておりました。それから起きてきて、ごろごろして読書した。今日はどんなお話を読んだか、と言いますと・・・
・・・・・・・・・・・・・・
宋の時代、高郵の禅居寺というお寺の仏殿前を、一人の男が、
往来夜中不得出。
夜中に往来して出づるを得ず。
夜更け、あちらに行きこちらに行きしてさまよっていた。どうやら出口がわからないようである。
僧怪之、曰、汝往来何求。
僧これを怪しみて曰く、「汝往来して何をか求むや」と。
見回りの僧が不思議に思って声をかけた。「おまえさんはあっちへ行ったりこっちへ行ったり、何がしたいのじゃ?」
すると男は、助けを求めるかのように僧を拝みながら、
欲求門以出。
門を求め、以て出でんと欲す。
「どこから出ていけばいいのかわからないのです。門は何処でしょうか」
「はあ?」
僧は目の前の門を指さして、
此門也。
これ門なり。
「これが門じゃぞ」
と教えた。
「あ、ほんとだ。ありがとうございます」
他之、竟不見也。
他(かれ)之(ゆ)かんとして、ついに見えざるなり。
男はそちらに行こうとして、「あれ? あれ?」と、また門が見えなくなってしまったらしく、迷っている。
「これ、おまえはいったいどうしたのじゃ?」
と僧が詰問すると、男は涙を流しながら言った。
「もう仕方ありません、今は正直に申し上げます。実は・・・」
と、
具以竊仏髻珠為対、即引盗納珠、令投哀引咎。
つぶさに仏髻の珠を竊みしを以て対と為し、即ち盗納の珠を引きて、投じて咎を哀引せしむ。
正直に仏像のもとどりに結ばれていた宝玉を盗んでしまった、と告げた。そして、盗んで懐に入れていた宝玉を取り出し、これを投げ出して哀れんで罪を許してもらいたいと言い出した。
その途端、
「あ、見えた!」
と叫んで、
識途而去。
途を識りて去れり。
道がわかったらしく、逃げ去って行ってしまった。
「なんというバチ当たりなやつじゃ」
僧は宝玉を拭って仏像に納め直したのであった・・・。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・、
宋・張邦基「墨荘漫録」より。ここまでで止めておけばありがたいお話なんですが、続きがあるんです。みなさん、この先を読むのはやめておきましょう。
・・・僧が宝玉を納め直して、
見座下有敗経、腐爛狼藉。
座下を見るに敗経の腐爛狼藉せるあり。
ふと座り場所の下を見たところ、ぼろぼろになった経巻が落ちていた。穴があき破れ爛れて、ぐしゃぐしゃになっている。
「あわわ、もったいないことじゃ」
と拾い上げようとすると、「チイ、チイ」と何やら鳴き声がする。なんと、
鼠巣其中。
鼠、その中に巣くえり。
ネズミが経典の中に巣をつくっていたのだ。
その中には、
小鼠数枚、尚未能走。或少足、或眇目、欠尾者、無耳者、殆無一全形。可怪也。
小鼠数枚、なおいまだ走るあたわざるあり。或いは少足、或いは眇目、欠尾なるもの、無耳なるものにして、ほとんど一も全形無し。怪しむべきなり。
小さなネズミが何匹か、まだ逃げ出すこともできないようなのが入っていた。それらをよくよく見ると、足の少ないもの、一つ目のもの、しっぽの切れたもの、耳の無いものなど、ほとんどのネズミがどこか変なのである。不思議なことであった。
・・・と、いかにもチャイナ古典文学らしい不気味なオチになっておりました。だから読まなきゃよかったのに。