平成31年2月10日(日)  目次へ  前回に戻る

巨大なぶたパンを平らげる炭水化物ライオン。糖類はライオンにとって毒の可能性があるが、彼の欲望がとどまることはない。

関東の雪がイヤで逃亡してしまった肝冷斎、いまのところ音信不通であるが、洞穴の中に以下のメモが遺されていたらしいのでここに掲げる。

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・・・南北朝の時代のことでございますが、北周の武帝(宇文邕。游在位561〜578)は、

置官醸毒薬為酒、年以供進。

官を置きて毒薬を醸して酒と為し、年を以て供進せしむ。

毒薬を混ぜた酒を醸造させる役所を置き、毎年納品させていた。

この毒酒は原料として、

所用不一、名野叉酒。

用いるところ一ならず、名づけて「野叉酒」という。

いろんなものを使用していた。(一種類の毒だと解毒剤が作られてしまうからである。)宮中ではこの酒を「野叉酒」(やしゃしゅ)と呼んでいた。

もちろん、空を飛んで捕らえた人を喰い殺す「夜叉」(ヤシャ)のように、あっという間に人命を奪っていく意味を籠めての命名である。

この酒を作る仕事には、

従者皆取大辟捨罪、而駆策之官長歳頒続命金。

従う者みな大辟に取りて捨罪し、而して駆策の官長、歳に「続命金」を頒(わか)つ。

従事する労働者はみな大罪を犯した者たちをその罪と引き換えに働かせ、かれらをむち打って働かせる管理職には、毎年「生き延び金」という賞与が与えられるのであった。

以毒気薫煮官被者多死。

毒気の薫煮を以て、官被者多く死せり。

毒を煮込むときのガスを吸収して、この役所の者は多く死んだものである。

―――わははは。如何にもチャイナらしくておもしろいなあ。

と、ゲンダイの読者は笑っていられるのですが、当事者たちにとっては笑いごとではありません。

徒卒恐怯、鴆為一払鳥頃刻虫、蝮蛇為霹靂、蜂為小峭。

徒卒、鴆を一払鳥・頃刻虫と為し、蝮蛇を霹靂と為し、蜂を小峭と為して恐怯せり。

労働者たちは、原料として運び込まれる生物について、猛毒の鳥・鴆(ちん)を「一払い(で殺す)鳥」あるいは「あっという間(で死ぬ)ドウブツ」と、マムシや毒蛇を「カミナリさん(のようにあっという間に殺すやつ)」と、毒バチを「ちょっと厳しい(やつ)」と呼んで、恐れ震えたのであった。

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「清異録」巻二より。肝冷斎は比較的穏健派を装っているだけで、本来はこういう毒ものとか残虐ものが大好きなタイプの東洋人なのです。闇に隠れた今、いったい何をたくらんでいるのか。(なお、四国で目撃情報ありという)。

 

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