ぶたとのはいろんな扇子を持っているのでぶー。
今日も扇子がらみのお話です。
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明の時代のこと、広東の張某は金華郡守として、清廉な政治を行ったが、在職中に亡くなった。
其子扶櫬帰、路遇僧欲行。家人力拒、公子納之。
その子、櫬(しん)を扶して帰るに、路に僧のともに行かんと欲するに遇う。家人力拒するも、公子これを納る。
坊ちゃんがその棺を運んで郷里に帰ることになったが、その道すがら、一人の僧が現れて、「ご一緒させていただきたい」と請うた。ほかの親族は強く拒もうとしたが、坊ちゃんだけは「ぜひご一緒くだちゃい」と僧侶の申し出を受けたのであった。
十日ほどの間、毎日僧侶にお斎をさし上げていた。
福建からは舟を雇い、海岸伝いに広東に向かうことしたが、
過洋遇盗舟、揚帆而来。
洋を過ぐるに盗舟の帆を揚げて来たるに遇う。
外洋に出たところ、海賊船に遭遇してしまった。帆を揚げてたいへんな速度で追ってくる。
海賊船はどんどん近づいてきて、獰猛な海賊たちの顔まで確認できる距離になった。このままでは追いつかれてしまう―――と誰もが思ったとき、
「わたしにお任せください」
同行の僧が舟の艫に立ち、
取弾一発。
弾を取りて、一発す。
懐から鉄製の弾丸を取り出し、これを指で弾いて発射した。
弾丸はすさまじい勢いで海賊船に向かって飛び、
どかーん!
正中桔槹、帆不能下、竟去。
桔槹に正中して、帆下すあたわず、ついに去れり。
帆の上げ下げをする器械に過たず命中した。海賊船は帆を下げることができなくなったらしく、何やら騒いでいるのがこちらからも見てとれたが、やがて舟がコントロールできなくなって遠ざかって行った。
及泊岸、僧曰、今別公子矣。尊人為廉吏、茲来為免公子難耳。
岸に泊するに及んで、僧曰く「今、公子に別る。尊人は廉吏なれば、茲(ここ)に来たりて公子の難を免るるを為せるのみ」と。
海岸に上陸したところで、僧は言った。
「坊ちゃん、それではこれでお別れです。あなたの父上は立派なお役人だった。それで、ここまで、坊ちゃんの難儀をお助けしようと思って同行してきたのです。その役目も終わりました」
「ええ? ここから別れていくのでちゅか?」
公子挽留不獲、贈以衣r不納、固請、止持一扇去。
公子、挽留するも獲ず、贈るに衣r(いそう)を以てするも納れず、固請するに、ただ一扇を持して去れり。
坊ちゃんは引きとどめたが、聞いてもらえないことがわかると、餞別に衣服を贈ろうとした。しかし僧はそれも辞退し、それでも坊ちゃんがぜひにというので、
「それではこれをいただいていきましょう」
と、一本の扇を手にして、去って行った。
「かっちょいい」
数日後、ようやく張家の実家に到着し、棺を安置するとともに、荷物をほどきました。
すると、
開篋而前扇仍在。
篋を開くに前(さき)の扇なお在り。
行李を開いたところ、僧に贈ったはずの扇が、衣装類の上にきちんと置かれていた。
ああ。
蓋仙真幻化、以祐善者。不然、以清白吏、後人罹患叵測、非天理矣。
けだし、仙真の幻化して、以て善者を祐(たす)くるなり。然らざれば、清白の吏を以て、後人叵測に罹患せば、天理にあらざるなり。
「叵」(は)は、「難しい」「できない」という意味です。「可」(か)の字が「できる」という意味に使われるようになってから、「可」の字形をひっくり返して「できない」の意味の字としてつくられた。
これはつまり、真の仙人さまが変化して、善のひとを助けてくださったのです。そうしなければ、清廉潔白な役人の子どもが、予測できない困難にぶつかるようなことになってしまい、天の理法から外れてしまうからなのです。
そうなのか。
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明・劉忭等「続耳譚」巻三より。そんな「天の理法」は近年ではもうありません。昔はあったんだとすると、昔は人が純粋であった分、「天の理法」も善良でナイーブだったのであろう。
今日は午後、あたたかかったので、都内某所で「温泉」について学んだ。無料でこんなに勉強して、かっこいいゲームももらえるとは。