天井からアタマを出して動かないやつがいるので、槍で突っついたら、ぶちゅ。手ごたえが・・・。相手があまりにも弱小であると、こちらが大したことなくてもうまくいくこともある。
今日出勤したデコイ肝冷斎が悲しげな顔をして帰ってきました。キモチはわかるが、他の肝冷斎族に出勤するやつはもういないので、「かわいそうだが、明日も出勤してもらわねばならんぞ!」と怒鳴りつけると、黙ってうなずいておりました。やっぱり世の中、怒鳴りつけると言うこと聞くやついるんだなあ。
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清の時代のことでございます。
孫協飛先生というひと、公務があって、
夜宿山家。
夜、山家に宿す。
ある晩、山中の家に一泊したことがあった。
この家は普段は空き家となっており、用務のある人が宿泊するだけであったが、夜半、
聞了鳥丁東声。
了鳥の丁東(てい・とう)の声を聞く。
「了鳥」というのは、門の上から掛けられている鉄の棒で、客があってこれを引っ張ると、付けられた鈴などが鳴って来客を報せる装置。「丁東」は鈴などが「ちんとん」と鳴る音のオノマトペです。
門の了鳥が引かれて、「チンチン」と鳴る音が聞こえた。
先生は大きな声で訊いた。
「誰じゃ?」
すると、
門外小語曰、我非鬼非魅、隣女欲有所白也。
門外より小語して曰く、「我は鬼にあらず魅にあらず、隣女の白(もう)すところ有らんと欲するなり」と。
門の外から、ささやくような声で、
「あたしは幽霊でも精霊でもございません。隣の女です。あなたに言いたいことがあって来たの」
と言うのであった。
案外艶っぽい声である。
先生は言った。
誰呼汝為鬼魅。而先弁非鬼非魅也。非欲蓋弥彰乎。
誰か汝を呼びて鬼魅と為すや。しかるにまず鬼にあらず魅にあらずと弁ず。けだしいよいよ彰らかならんと欲するにあらずや。
「誰がお前のことを幽霊だろう、精霊だろう、言ったのか?(誰も言っていない。)それなのに、「あたしは幽霊でも精霊でもない」と先に弁解しはじめるとは、正体を自分でどんどん明かしてしまっているのではないのか」
そして、一段と声を張り上げて、怒鳴りつけた。
「おまえはおそらく幽霊か精霊であろう!」
再聴之、寂無声矣。
再びこれを聴くも、寂として声無し。
そしてもう一度耳を澄ましてみたが、しーんとしてもう何の物音もしなかった。
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「閲微草堂筆記」巻十三より。途中まで何が起こるかとひやひやしましたが、先生がどかんと怒鳴りつけてくれたので、何も起こらなくてよかったあ。平日なのにここから女の幽霊やら化けた精霊やら出てきてひと騒動あったら大変なところでした。風邪気味だし、また深夜になってきているし、もう寝ます。