平成30年11月20日(火)  目次へ  前回に戻る

落葉の下に安住の地を得たと思ったモグであるが、すぐにヒヨコ地上げが現れた! 「いかんせん」(どうすればいいのだ!)。

眠い。昼間も寒くなってきたので、いよいよ昼間職場で居眠りして凍死してしまうかも知れません。ああ、南の国に行きたいなあ。

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―――いつまでもここにおるわけにもいきますまい。

―――我らはそれぞれに旅立とう。

別れの歌、その一 

草草離亭鞍馬、  草草として亭を離るるの鞍馬、

従遠道此地分襟、 遠道よりすれど、この地に襟を分かちて、

燕宋秦呉千万里。 燕・宋・秦・呉、千万里ならん。

 そそくさと旅の宿を去り行く馬の鞍(に跨る我ら)、

 遠いところからともにやってきたが、今ここで襟を贈りあって別れる。

 行く手は河北、河南、四川、江東・・・、千万里の彼方へ。

別れに当たっては、

無辞一酔、    辞無く一酔す、

野棠開江草湿。  野棠開き、江草は湿る。

佇立沾泣、    佇立し、沾泣するも、

征騎駸駸。    征騎は駸駸たり。

 酔いはしてもコトバもなく、

 野には海棠が咲き、川べりの草は濡れていた。

 (われらは)立ちすくみ、涙に濡れながら、

 行く馬の脚は駸駸(しんしん)として疾かった。

「駸」は馬の速駆けするさまである。

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―――あたしたちももうお別れね。

―――・・・・・・・。

別れの歌、その二 

離棹逡巡欲動、  離棹は逡巡すれども動かんとし、

臨極浦故人相送。 極浦に臨んで故人と相送る。

去住心情知不共。 去るも住(とどま)るも心情は共にせざるを知れり。

 別れのための棹は、ためらっていたけれど、そろそろ動きはじめます。

 極浦のみなとであのひとを見送る。

 行くひとも止まるあたしも、もう二度と同じ思いを持つことはないんだなあ。

まあそういうわけで、最後に

金船満捧、    金船、満たし捧げ、 

綺羅愁糸竹咽。  綺羅(きら)は愁い、糸竹は咽ぶ。

廻別帆影滅、   廻り別れ、帆影滅し、

江浪如雪。    江浪は雪の如し。

 黄金の大盃にお酒を満たしてあなたに捧げる。

 うつくしいひとは悲しみ、琴と笛は悲しい音楽を奏でた。

 舟はたゆたいながら出て行き、帆影も消えゆき、

 川の波は雪のように白く砕けている。

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五代・孫光憲「上行盃」詞一・二「花間集」より)。孫光憲は五代十国の十国の一である荊南国に仕え、節度副使に至り、後、荊南王に勧めて宋に帰順した。宋に入って黄州刺史となる。至るところ治名挙がり、また学問に優れて、「北夢瑣言」等の著書あり。・・・という立派なひとなんでカッコいいんですが、詞人としても有名で、その詞は哀切胸を打ち、これを読んだ人をして、

徒喚奈何。

いたずらに「いかんせん」と喚ばわしむ。

「ああ、どうすればいいのだ」と無為に叫びをあげさせる。

と評さる。

・・・ということで、わたしども、詞を読まなくても「いかんせん!」と叫びたくなってまいるような状態ですが、もう数日だけ耐えてみるか・・・。

 

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