「サルよ、このおにぎりとおまえのキモを交換するカニ」「うーん、おにぎりとキモならおにぎりの方がよいかもモンキ」と迷うサルである。みなさんも同じようなことで迷っているのではないですか?
なんとか一週間終了。少しづつやられながらもなんとか持ちこたえたが、来週はもうムリか。
・・・・・・・・・・・・・・・・・
戦国の時代、趙の国に王の寵臣Aがおられました。あるとき、このAのところに
「あなたによいことをお教えしましょう」
と言って、Bというひとがやってきた。
「どんなことですかな」
「おっほん」
B曰く、
人有置係蹄者、而得虎。
人、係蹄(けいてい)を置く者有り、而して虎を得たり。
ドウブツを捕まえるために、ひづめを引っかけるタイプの罠を仕掛けておくと、その罠にトラがかかることがある。
そうすると、
虎怒決蹯而去。
虎、怒りて蹯を決して去れり。
「蹯」(はん)はクマの手のひらのことを「熊蹯」(ゆうはん)といって八珍(八つの美味なるもの。クマの手のひらははちみつが沁み込んでおり、珍味とされる)の一つに数えますように、ドウブツの前後足の手のひら側のこと。この罠はトラのどちらかの足の蹯に食い込んだのです。
トラは怒り狂って、自分の足の裏の肉を引きちぎって罠を外して、去って行くのである。
・・・このため、山野にはときおり罠にトラの蹯の肉だけが残っていることがございますが、ひとびとはトラが仕返しに来ることを恐れて、そのままにしておくのだそうでございます。
虎之情、非不愛其蹯也。然而不以環寸之蹯、害七尺之躯者、権也。
虎の情、その蹯を愛(お)しまざるにあらず。しかるに環寸の蹯を以て七尺の躯を害せざるは、権なり。
トラのキモチとして、自分の足の裏の肉は大切なものに決まっています。しかし、その直径何センチかの足の裏を惜しんでいたのでは、罠にかかったままで、やがて猟師に見つかって、二メートルの全身を全うすることができなくなる―――そこで、足の裏を犠牲にして自分の全身を全うする、という判断をしたわけです。
さて。
今有国、非直七尺躯也。而君之身於王、非環寸之蹯也。
今、国を有(たも)つは、直(ただ)に七尺の躯のみにあらざるなり。而して君の身の王における、環寸の蹯にもあらず。
国を保有する、というのは、二メートル程度の身体より、ずっと重要な問題です。そして、あなたの身体なんか、王さまにとっては直径数センチの足の裏の肉ほどの価値はございますまい。
願公之熟図之也。
公のこれを熟図(じゅくと)せられんことを願う。
あなたさまがこのことを、ようく考えてくださるとよろしいのですが。
ひっひっひ。
・・・・・・・・・・・・・・・
「戦国策」巻六「趙策下」より。勉強になるなあ。(給料・利益など)わずか数センチの足の裏の肉のために、大切な自分自身をコロしてしまってはなりませんぞ。