文・武両道に行き詰まった状態の平家くん。天に上るに路無く、地に入るに門無し。滅亡するしかないのか。
更新がめんどくさいので影肝冷斎族もいなくなってしまいました。この行き詰まった状態に、我ら虚肝冷斎族が登場せざるを得なくなったのである。
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北宋ごろのことだと思うんですが、湖州の西余体柔禅師が、僧侶たちに言ったコトバを引用する。
―――諸君。たいへんだ。
一人把火、自燼其身。一人抱冰、横死于路。
一人火を把りて自らその身を燼(やきつ)くせり。一人冰を抱き、路に横死す。
―――こいつは火を持ち出して、自分に火をつけて自分を焼き殺してしまったぞ。あいつは氷を抱いたまま、寒い路上に横たわって凍死してしまったぞ。
たいへん追い詰められた状態らしい。
進前即触途成滞、退後即噎気填胸。直得上天無路、入地無門、如今已不奈何也。
前に進まんとすれば即ち触途して滞りを成し、後に退かんとすれば即ち噎気して胸を塡(ふさ)ぐ。ひたに得たり、天に上らんとするに路無く、地に入らんとするに門無し、如今すでに奈何せざらん。
―――前に進もうとすると道は行き止まりでそこで動けない。後ろに下がろうとするとゲップが胸いっぱいになって動けない。まさに天に上ろうとしても道は無く、地に潜ろうとしても門は無い、という状態だ。いまこの時、どうすることもできないでいる!
うわー、どうすればいいのでしょうか!
どうすればいいのか考えます。
ぽく、ぽく、ぽく、ぽく、ぽく、うーん。
すると、
良久云、待得雪消去、自然春到来。
やや久しくして云う、待ち得て雪消え去れば、自然に春到来せん。
しばらくすると禅師がおっしゃった。
「雪が消え去るまで待っていられれば、おのずと春がやってくる」
なるほど。しかし、雪の消え去るまで待たないといけないのがツラいところ。
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「五燈会元」巻十より。西余体柔禅師のことは、法眼宗に属した棲賢澄(萬寿徳興の兄弟弟子)の弟子である、という以外ほとんど何もわからないのですが、「天に上らんとするに路無く、地に入らんとするに門無し」という二句が行き詰まった状態を形容する成句としてたいへん有名なので、覚えておきましょう。昇進試験に出るカモ。普通の会社では出ないと思いますが。