平和そうなおかしなやつもあちこちにいると思うが・・・。
わーい、週末です。しかし好事にこそ魔の多いのがこの世の常、悪いことが起こらないように祈ろう。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
萬暦己酉(1609)年二月のこと、北京・東華門の衛兵屯所に緊急報告が入った。
忽有披髪瘋癲不知姓名妄男子、在禁城内。
忽ちにして披髪、瘋癲にして姓名を知られざる妄男子の、禁城内に在る有り、と。
「どこからどう入ったのか、髪は(辮髪にせず髪を束ねて冠や頭巾をつけるなどせず※)ばらばらで、行動の理解できないおかしな男が宮中内に入り込んでおり、姓名を訊いても答えない」 ※すみません、「明代の話になんで辮髪が出てくるのじゃ。この未熟者めが」という識者の御教示をいただきました。修正します。ありがとうございます。
というのである。
東華門屯所では急ぎ一部隊を遣わして追い求めさせたが、やがてその部隊が戻ってきて、
此人径由東華門去訖、歘然不見。
この人、径(ただ)ちに東華門より去り訖(おわ)りて、歘然(くつぜん)として見えずなりき。
「当該人物を発見して捕縛しようとしましたが、そやつはまっすぐこの東華門の方に向かって逃走し、この門のところで、ふっと見えなくなってしまいました」
と報告したのであった。
なんと不思議なことでありましょうか。
実はこの前夜、
司天台奏有白気亘天、如匹練状。占曰主兵。
司天台、白気天に亘(わた)りて、匹練の如き状なる有り、と奏す。占して曰く「主兵なり」と。
天体の観察を掌る司天台から、宮中深くに緊急の上奏があった。
「白い織物のようなガス状の物質が天を横断しているのが観察されました。天体占法によれば、これは「戦乱を導く」とされます」
というのであった。
また、数か月前から、
西方稍南一星独大、而光芒四射。
西方やや南、一星のひとり大にして、光芒四射す。
西の方角、少し南の方向にあった星が大きくなり、光芒が四方に射出する事態が起こっていた。
識者曰旄頭。亦兵象也。
識者曰く「旄頭」と。また兵象なり。
知識人が言うには、「あれは「旗飾りの先」という星象じゃ」と。これもまた戦乱の兆しである。
「なんと!」
ひとびとが何かおそろしいことが起こるかと怯えていたところ、
是歳薊門、遼海之間烽火昼驚、人心騒動。此其応矣。
この歳、薊門(けいもん)、遼海の間、烽火昼驚き、人心騒動す。これその応なり。
この年、天津の薊門地域から遼東半島方面にかけて、昼間に「のろしの火が見えた」といって人民どもが大騒ぎしたことがあった。この事件を予告していたのであろう。
・・・・・・・・・・・・・・
「獪園」第十五より。この年は島津の琉球入りの年ですが、特に関係はないと思います。
それにしても、最初の「おかしな男」がどういうふうに兵乱と関係があるのか、どこをどう読んでも近代的な教育を受けたわたしにはよくわかりません。わかりませんが、悪い兆しであったのでしょう。おかしな男が現れると悪いことが起こるらしい。ああ悪いことが起こらないといいなあ。
ついでに、韓国もこのままシアワセでいてくれるといいのだが・・・。