ぶたパンに売れ残り無し。なぜなら売れなかった分は生産者がすべて食べてしまうから・・・。規則正しい食事は健康のもとでもある。
今日は午後から外勤→直帰。少し得した気分。また明日が来るのがツラいけど。
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加賀の国のある武士は、
常好猟、多射鹿。
常に猟を好み、多く鹿を射る。
従来から狩猟が好きで、ずいぶんたくさんのシカを射殺してきた。
あるとき、坊主の説教を聞いていて、
忽自悔思、吾多害物命、罪悪難免。
たちまち自ら悔いて思うに、吾多く物の命を害し、罪悪免れ難からん。
突然、自分のやってきたことを後悔して思うに、「わしはずいぶんたくさんのモノの命を奪ってきた。この罪悪からは逃れられないじゃろうなあ」と。
「ああ、わしはダメ人間なのじゃ」
従此起臥常見鹿、駆之不去、鬱鬱度日、殆不能御飲食、勢向危篤。
これより起臥に常に鹿を見、これを駆るも去らず、鬱鬱として日を度して、ほとんど飲食を御するあたわずして、勢い危篤に向かう。
このときから、起きていても寝ていてもシカの姿が目にうつるようになった。追い立てても去らない。武士はイヤになってふさぎこんで日々を過ごすようになり、飲み食いも規則通りにしなくなって、とうとう危篤状態になってしまった。
それを聞いて、古い友人がやってきた。
このひと、
持一刀来与之、曰、是名神息。霊剣也。置之室中、則百怪不近。
一刀を持して来たりてこれに与え、曰く「これ、神息と名づく。霊剣なり。これを室中に置けば、すなわち百怪近づかざらん」と。
一振りの刀を持って来て、これを武士に贈って、
「この刀は「神息丸」という霊力のある名刀じゃ。これを部屋の中に置いておけば、どんな魔物も近づくことはできなくなるぞ」
と言った。
「そうなのか。これが名高い神息丸という霊刀なのか・・・」
武士はそのことを深く信じ、これを寝室の床の間に懸けた。
すると、
鹿不復見。
鹿、また見えず。
シカはもう現れなくなった。
そのうちに、食欲も出るようになって、
病亦尋瘥。
病いまたついで瘥(い)ゆ。
病気もやがて治ってしまった。
しばらくするとまた友人がやってきた。武士は貴重な霊刀を貸してくれたことを厚く感謝して、大いに礼をしようとしたのだが、友人は
「わははは、滅相もない」
と言いまして、
是市中凡刀耳。凡狐魅邪祟之疾、皆由心而生。鹿本不為祟、汝深信是刀之有霊、故得病瘥。
これ市中の凡刀のみ。およそ狐魅・邪祟の疾は、みな心よりして生ず。鹿もと祟りを為さず、汝深くこの刀の霊有るを信ず、故に病いの瘥ゆるを得たり。
「これは町中で手に入れたありふれた刀じゃ。だいたい、キツネのすだまにとりつかれたり、邪悪なモノに祟られたりしてなる病気は、みんな自分の心が引き起こすものだからな。もともとシカが祟りなんか為すことは無いんじゃ。そして、おまえさんがこの刀に霊的な力がある、と深く信じたから、病気が治ったのじゃよ」
と言いました。
「なにい、だましやがって!」
と武士は刀を抜いて一刀両断に・・・とはなりませんでして、
「わはは、なんだそうであったのか」
「わははは」
と二人笑いあったということです。
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伊藤仁斎「古学先生文集」より。明日もいろいろイヤなことがあると思われますが、こんな霊刀があったら「うるさーい!」とずばっと斬ってしまえばすっきりして、「わははわはは」と笑っていられるカモ。何を斬るのか? それはもちろん・・・