平成30年2月19日(月)  目次へ  前回に戻る

あ、ぶたタクだ! ぶたタクはひよこナビを導入しているものの、「無事故・十円・無到着」がスローガンである。なめてかかるとどこに連れていかれるかわからない。

今日も新たにイヤなことがあったなあ。心の無いブタだからいいものの、もしニンゲンだったら絶望しているところでぶよ。

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明の萬暦癸丑年(1613)秋、江蘇・呉の長洲県陽城湖、玄珠村での出来事、というところまではっきりわかっておりますが、ある人が、

夜夢家中所畜豬皆無首。

夜、家中に畜(たくわ)うところの豬(ちょ)、みな首無し、と夢む。

ある晩、家で飼っているブタが、どれもこれもアタマを無くしてしまった、という夢をみた。

「変な夢を見たなあ」

怪之、開晨起視。

これを怪しみて、開晨起きて視る。

いやなキモチになりながら、朝になって、起きだしてブタたちの様子を見に行った。

ブタどもは、

「ぶー」「ぶー」「ぶーでぶー」

と鳴きながら、いつものように騒いでいる。

「別に変わりはないよな・・・」

ひょい、とブタ小屋をのぞき込みますと、

欄中豬無一有首者、且覓食撥草、躁擾如故。

欄中の豬、一も首有るもの無く、かつ食を覓(もと)め草を撥ね、躁擾もとの如きなり。

柵の中のブタどもには、アタマがあるやつは一頭もいない―――みんなアタマが無くなっていた。それが、食べ物を探し、草を撥ね上げて、いつものように「ぶー」「ぶー」と大騒ぎしていたのだ。

「うわー、なんだこれは。縁起でもないぞ!」

そのひとはただちに家人らに命じて、

殺而食之。

殺してこれを食う。

ブタどもを殺して食ってしまった。

そうしたら、

旬日間、一家七口蕩尽。

旬日の間に、一家七口蕩尽せり。

十日も経たない間に、その家の家族七人、みんな死に尽くしてしまったのであった。

なんということでしょう。

呉人周虚館於其隣、目撃斯禍。

呉人周虚、その隣に館し、この禍を目撃せり。

呉のひと周虚がその家の隣に住んでいて、この災害をその目で見たのである。

と言って教えてくれたことである。

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明・銭希言「獪園」第十四より。目撃者がいるんですから本当のことなんでしょう。

ブタをなめているとひどい目に遭うこともある、ということでぶな。ぶっぶっぶ。(一家全滅は単なる食べ過ぎカモ)

 

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