無謀に食って腹を壊すのはドウブツにとって日常茶飯事である。チャレンジ精神の無いものは生きていけないサダメなのだ。
昨日の更新中に、目がカスミだし、指シビレ呼吸がしづらくなって、びっくりしました。いよいよ今日こそ放下し了するのか、どうせなら日曜の夜に・・・とホントに思いましたが、そのうち腹痛で何かに当たったらしい、とわかってきて、ガマンしているうちに治ってしまいました。ぶたは自制ができないのでなんでも食べるが、実は胃腸は強くない、という劣悪な状態なのでよく苦労しまぶ。治ってしまったので今日も更新でぶ。
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むかしむかし―――応神天皇が崩御された後、太子(ひつぎのみこ)であられた菟道稚郎子皇子(うぢのわきいらつこのみこ)は、兄の大鷦鷯尊(おほさざきのみこと)が聡明であるのでこれが位を継ぐべきだ、とし、大鷦鷯尊は先帝の太子と定められたあなたをおいて日嗣の皇子になるわけにはいかん、と受けないまま、三年を経た。
そんなある日、
「よいちょ、よいちょ」
有海人齎鮮魚之苞苴、献于菟道宮也。
海人有りて鮮魚の苞苴を齎(も)ちて、菟道の宮に献(たてまつ)る。
海人族の者たちが、干されていない生魚の包みを持って、ウジにある菟道の稚郎子の宮に献上しにきた。
日嗣の皇子に納税に来たのである。
ところが、
太子命海人曰我非天皇。乃返之令進難波。大鷦鷯尊亦返以令献菟道。
太子、海人に命じて曰く、我は天皇にあらず、と。すなわちこれを返して難波に進(たてま)つらしめたまう。大鷦鷯尊、また返して菟道に献(たてま)つらしめたまえり。
太子のウジノワキイラツコのみことは、海人族に言う、
「わたしはスメラミコトではないんじゃ」
と。魚を海人族に返品して、難波にいるオオサザキのみことのところに持って行くよう命じた。
すると、オオサザキのみこともまた返品して、ウジに献上に行かせた。
「よいちょ、よいちょ」「よいちょ、よいちょ」
於是海人之苞苴鮾於往還。
ここにおいて、海人の苞苴、往還に鮾(あざ)れぬ。
こんなことをしていたので、海人族の包みは、行き帰りのうちに腐ってしまった。
「うひゃあ」
「おおぎみに奉る税が腐ってしまいまちたー」
「これはいけませんよ」
更返之取他鮮魚、亦献焉。譲如前日、鮮魚亦鮾。
更にこれを返して他の鮮魚を取り、また献つる。譲ること前日の如く、鮮魚また鮾(あざ)れたり。
腐ってしまった魚を持ち帰って、もう一度ほかの生魚を持ってきて、また献上したのだが、譲り合うこと以前のとおりで、生魚はまた腐ってしまった。
「うわーん」
海人苦於屢還、乃棄鮮魚、而哭。
海人しばしば還るに苦しみて、すなわち鮮魚を棄てて、哭(ねな)けり。
海人族のやつらは何度も行き帰りするのに苦しんで、生魚を棄ててしまって声をあげて泣いた。
故諺曰、有海人耶因己物以泣、其是縁矣。
故に諺に曰く、「海人なれやおのがものから以て泣(ねな)く」とは、それこの縁なり。
このことから、今でも「海人族のようだなあ、自分の持ち物のせいで声をあげて泣くことになるとは」という言い方をするようになったのである。
そんな言い方があるんですね。
さて、この様子をご覧になられて、菟道稚郎子皇子さまは、
我知不可奪兄王之心。豈久生之煩於天下乎。乃自死焉。
我、兄王(いろせのきみ)の心を奪うべからざるを知る。あに久しく生きて天下を煩わさんや。すなわち自ら死(おわりたま)いぬ。
「どうやら兄君の心を変えていただくことはできないようですね。ああ、どうしてこれ以上生きて、天下の民くさを困らせることができようか」
とおっしゃられて、自らお亡くなりになった。
かくして大鷦鷯尊は位に即きたもうた。仁徳天皇である。
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伝・蘇我馬子撰「先代旧事紀」巻第八より。「日本書紀」にも書いてあるお話だそうです。
ああ。上つ世のひとびとの優しくのどかなることかな。
後世の詩人は歌うて曰く、
貢之菟道菟道譲、 これを菟道に貢げば菟道譲り、
貢之難波難波辞。 これを難波に貢げば難波辞す。
相辞相譲魚既鮾、 相辞し相譲りて魚すでに鮾(あざ)れ、
海人抱魚哭孔悲。 海人魚を抱きて哭しはなはだ悲しめり。
ウジの宮に納税に行くとウジでは「あちらへ持って行け」とおっしゃられ、
ナニワの宮に納税に行くとナニワでも「あちらへ持って行け」とおっしゃられる。
互いに譲り合っているうちに魚はもう腐ってしまい、
海人族のやつらは魚を抱えて声をあげて泣きてたいへん悲しんだのだ。
嗚呼吁嗟、 おこ。うさ。
後世天下皆棄徳、 後世天下みな徳を棄て、
此俗一掃遂無跡。 この俗ひとたび掃われて遂に跡無し。
兄弟叔姪互相奪、 兄弟・叔姪互いにあい奪いて、
魚兮欲鮾不可得。 魚、鮾れんと欲するも得べからず。
ああ!うう! 後の世では世の中のやつらはみんな徳を棄ててしまったので、
このような譲り合いの風習は一掃されてしまって、今ではどこにもない。
兄と弟、叔父と甥、一族の間で互いに奪い合うばかりで、
魚よ、おまえが腐ってしまいたい、と思ってもそんなヒマもないのだ。
と。陸羯南「鮾魚の歌」(腐った魚のうた)。
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腐った魚を食うと腹を壊すであろう。気をつけなければならぬ。