平成29年12月15日(金)  目次へ  前回に戻る

さすがにこれはムリかも・・・というような量であっても、

すさまじい気力で食べ尽くす!

今日は昼の麻婆豆腐定食がいけなかった。ラー油がたっぷりでカロリー爆高だった上に、辛くてごはんお代わりしてしまった。どんどん体が重くなってきて、深刻である。

とはいえ一週間なんとかがんばったので、おいらとみなさんにご褒美として、淳于髠(じゅんう・こん)先生が「五つの言葉」を教えてくれまーちゅ。耳の穴かっぽじって聞きまちょー。

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戦国の時代、斉の威王(在位前356〜前320)は、鄒忌(すうき)と会見してからわずか三か月目で、その才能に心服して、彼を宰相に任命した。

「どのような方かは知らないが、先輩としていくつか助言をしてさしあげよう」

以前から威王の食客であった淳于髠(→この人です)は、鄒忌に助言をするため面会を求めた。もとよりいくばくかの好奇心や嫉妬の念もあったにちがいない。

「えー、わたくし淳于髠にはオロカながら申し上げたいことがございます。どうかあなたの前でこれを陳述させてください」

「わたくし鄒忌はつつしんでお教えをお受けいたします」

淳于髠曰く、

1 得全全昌、失全全亡。

全を得れば全く昌(さか)えんも、全を失えば全く亡びん。

すべてのことを獲得されれば完全に成功しましょうけれど、すべてを得られなければ最終的には完全に滅亡してしまいましょう。

鄒忌曰く、

「なるほど」

謹受令。請謹毋離前。

謹んで令を受く、請う、謹んで前を離るるなからん。

お教えをお受けしました。(あなたの教えをすべて取り入れれば成功するが、つまみ食いでは失敗する、とおっしゃるのですな。)わかりました、あなたのお話が終わるまで、ずっとここで承ります。

2 豨膏棘軸、所以為滑也。然而不能運方穿。

豨膏(きこう)の棘軸(きょくじく)にするは滑を為す所以なり。しかして方穿は運(めぐ)らすあたわず。

棘木で作った車軸に塗るブタの脂は、車輪との接点の摩擦を減らして、円滑に回転させるためのものです。しかし、(ブタの脂を塗っても、丸い車軸と適合しない)四角い穴の車輪には回転させることはできません。

鄒忌曰く、

「なるほど。お教えをお受けしました」

請謹事左右。

請う、謹んで左右に事(つか)えん。

(まわりとうまくかみあわないと物事は動かないとおっしゃるのですな。)わかりました、同僚たちとうまく調整してシゴトをします。

3 弓膠昔幹、所以為合也。然而不能傅合疏罅。

弓、昔幹(せきかん)を膠す、合を為す所以なり。しかして疏罅(そか)を傅合するあたわず。

古い弓の材料にヒビが入っていると、ニカワでくっつけて(修理する)わけですが、大きなヒビが入っていれば、どうやったって修理できません。

鄒忌曰く、

「なるほど。お教えをお受けしました」

請謹自附於万民。

請う、謹んで万民に自附せん。

(国民との間での不信が大きくなると修復できない、とおっしゃるのですな。)わかりました、国民たちの意見に離れないよう自分の方から彼らに近づいて、シゴトをします。

4 狐裘雖弊、不可補以黄狗之皮。

狐裘は弊すといえども、黄狗の皮を以て補うべからず。

(高級な)キツネの毛皮で作った服は、破れたからといって、その破れ目に(低級な)黄色いイヌの皮を貼って修理することはできません。

鄒忌曰く、

「なるほど。お教えをお受けしました」

請謹択君子、毋雑小人其間。

請う、謹んで君子を択び、小人をその間に雑うるなからん。

(立派なモノに一部でもダメなモノをまじえると、全体としてダメになる、とおっしゃるのですな。)わかりました、大臣には立派なひとだけを選ぶことにし、悪いやつをその中に混じらせないようにいたします。

5 大車不較、不能載其常任。琴瑟不較、不能成其五音。

大車も較(はか)らずんば、それ常任を載することあたわず。琴瑟も較らずんば、それ五音を成すあたわず。

巨大な車両も(左右の車の大きさの)つり合いを取らなければ、普通の荷物さえ載せることができなくなります。琴や大琴も(糸の長さを調整して)つり合いを取らなければ、五つの音階さえ奏でることができなくなります。

鄒忌曰く、

「なるほど。お教えをお受けしました」

請謹修法律、而督姦吏。

請、謹んで法律を修め、而して姦吏を督さん。

(決まりを決めるだけではそれを利用して私利を図るやつが出る、とっしゃるのですな。)わかりました、よく考えて決まりをつくり、さらに悪い小役人を監視するようにいたします。

「\( ‘ω’)/わーい!」

淳于髠説畢趨出、至門而面其僕。

淳于髠、説き畢(おわ)りて趨出し、門に至りてその僕に面す。

淳于髠は言いたいことを言い終わると走って退出し、門のところまで来て自分の家来と顔を合わせた。

息せき切って、家来に言った。

是人者、吾語之微言五、其応我若響之応声。是人必封不久矣。

このひとなるものは、吾これに微言五を語るに、その我に応ずること響きの声に応ずるがごとし。このひと、必ず封ぜられるること久しからざらん。

「ここのひとは、わしが「はっきりしない言葉」を五つ話したら、そのわしの言葉に、声にコダマが応じるように即座に対応した。このひとは、あっという間に爵位を与えられることになるぞ!」

その言葉のとおり、鄒忌は一年もすると領地を与えられ、成侯という称号を与えられたのであった。

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「史記」巻四十六「田敬仲完世家」第十六より。

そんなに難しくないことを難しく言って困らせているだけ、のように見えますが、違うかも知れませんしそうなのかも知れません。週末なのでじっくり味わってみてください。とにかく一週間がんばったのでみなさんよかったなあ。来週にツラい問題がたくさん残っているけどなあ。

 

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