非常用にパンぐらい備蓄しておきたいものだが、買ってくるとすぐ食べてしまって備蓄できないのがわれらだ。
明日はまた平日だなあ、でぶー。
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今晩は台風来ているんで、大風のうた。
風伯一怒天地驚。 風伯一怒して天地驚く。
沙飛石翻万籟鳴。 沙飛び石翻り、万籟鳴れり。
黄雲捲地白日暗、 黄雲地を捲き、白日暗く、
屋瓦如雨乱縦横。 屋瓦雨の如く乱れて縦横す。
「おではもう、あー、あったま来ただよー!」と
風の神さまがひとたび怒れば天も地もびっくり仰天で、
砂は飛び、石はひっくりかえり、びゅうびゅうとあらゆるものが鳴り始めたぞ。
黄色く暗い雲は大地に捲き上がり、太陽も暗くなって、
屋根の瓦は雨のように散らかって縦に横に移動する。
何に頭に来たのでしょうか。おのれを受け容れぬ社会への怒りか、思い通りにならぬニンゲンどもへの叱責か。
枝頭棲鴉失母子、 枝頭の棲鴉、母子を失い、
天辺過雁乱弟兄。 天辺の過雁、弟兄を乱す。
倚庭喬松動有影、 庭に倚る喬松は動きて影有り、
潜階小虫懼無声。 階に潜む小虫は懼れて声無し。
枝を棲み処にしていたカラスの巣が吹き飛んで、カラスの母と子は生き別れに、
空の高いところを飛んでいた雁の列は乱れて、弟が兄より先に立ってしまった。
うちの庭にある背の高い松は、風に震えてその影を動かし、
縁側に潜む小さなムシは、恐怖のあまりに声を立てようともしない。
小さきモノは、みんなたいへんなんです。
忽去忽来抜山勢、 忽ち去り忽ち来たり、山を抜くの勢あり、
疑是万馬奔騰行。 疑うらくはこれ、万馬の奔騰して行くか、と。
すごい勢いで吹きすぎたかと思うと、またすごい勢いで次のやつが来て、山も吹っ飛ばされそうで、
一万頭ぐらいの馬が躍り上がって走りすぎていくのに似ているなあ、と思ったりする。
風はあかつき近くまで吹きまくっておりました。
暁来風定天如水、 あかつき来たりて風定まり、天は水の如く、
蒼蒼秋空残月明。 蒼蒼たる秋空には残月明らかなり。
空が明けかかってきたころ、風はおさまり、天は水のように澄み切って、
あおあおとした秋空に、消え残りの月がまだこうこうと光っていた。
あらしは過ぎたんです。
嗚呼。 ああ。
天上之機何奇絶、 天上の機は何ぞ奇絶なる、
我今見之感忽生。 我今これを見て感たちまち生ず。
焉得大箒如風伯、 いずくんぞ大箒の風伯の如きを得て、
一掃天下如斯清。 天下を一掃してかくのごとく清らかならしめん。
ああ、
天上の仕組みは、なんとすごい不思議なものなのだろうか。
わしは今この大風を見て、胸にもくもくと一つの思いが湧いてきた。
―――どこかに風の神さまのような、でかいほうきは無いものか。
もしもそれがあったら、この世の大掃除、あいつらやこいつらを掃き出して、清らかな世界を造りたいものなのだが―――。
それでもなおコトバ巧みなものたちは生き残るのだろう。そういや今日は総選挙だが。
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陸羯南「大風行」。杜甫の「茅屋為秋風所破歌」が意識されているのだと思います。
関東は明日の朝はもう晴れるみたいなんです。台風通り過ぎて、いろんなものが掃き出されて、この世が晴れ渡るといいんですが。先においらたちの方が掃き出されるのかも。