食い物さえたっぷり与えておけばあんまり怨みとか残らないものである。ぶた世界では。
昨日は自分がぶたであることを忘れてニンゲンみたいな言葉遣いをしてしまい、申し訳ないでぶー。今日からはぶたを徹底するでぶー。
それにしてももう明後日は月曜日か。落ち込んで来てしまいますね。もう明日からウツで更新しなくなってしまうカモ知れないので、今日は元気の出そうなやつを紹介します。でぶー。
・・・・・・・・・・・・・・
明の時代のことでございますが、江西・鉛山に羊角禅師とよばれる妖僧がいたそうなんです。でぶー。
彼には予知能力があったほか、
善呪死術。有怨者、往賂之、僧削木為札、書其人姓名年甲以実羊後。羊死其人死矣。
呪死の術を善くす。怨み有る者、往きてこれに賂(まいない)すれば、僧、木を削りて札と為し、その人の姓名・年甲を書きて、以て羊の後に実す。羊死すればその人死せり。
呪殺の術が得意であった。他人に怨みのある者は、彼のところに行ってある程度のカネを握らせる。すると、その僧は、木を削って札をつくり、それに相手の姓名や生年月を書いて、ヒツジの尻の穴に突っ込む。そのヒツジを殺すと、そのひとも死ぬのである。
なにしろこの僧に睨まれると、この呪術で殺されてしまう(かもしれない)のですから、その僧とその取り巻きたちは大きな勢威を奮っていた。県令さまでさえその勢いをはばかるほどであったのだ。
ところが、その鉛山に張昺という堅物の県令がやってきたのである。
張が赴任してきてから一年ほどして、
老婦訴僧詛其子、子方赴人飲、死席上。
老婦の僧に訴えてその子を詛(のろ)い、子まさに人に飲まんとして赴き、席上に死す。
とある老婦人が息子と争い、羊角禅師に呪殺を依頼し、息子が人の家の宴会に行って、その席上で急死した、という事件が起こった。
のである。
県令が関係者からいろいろ話を聞いているころ、
僧已知、語其徒、曰、張公此際、正躊躇矣。
僧すでに知り、その徒に語りて、曰く「張公この際にて、まさに躊躇せん」と。
僧はもうすでにその動きを察知しており、グループのやつらに、「張県令どのは、今いろいろと悩んでおられることだと思われるわい」と言っていた。
下手に捕まえに行くと、その呪力でコロされる(カモ知れない)のである。
「さあ、どうやってわしを捕まえるのかのう。ひっひっひ」
公乃出獄中死囚、令擒此僧、即貸其死。
公、すなわち、獄中の死囚を出だし、この僧を擒らえしめ、即ちその死を貸す。
県令は、獄中で死刑を待っている囚人を牢から出させ、おの僧を捕まえてきたら、死罪を宥そう、と持ち掛けた。
県令がその相談をしているころ、
僧又知之、曰、張公遣囚擒我、今至矣。
僧またこれを知り、曰く「張公、囚をして我を擒らえしめんとして、今至らん」と。
僧はやはりそのことを察知していて、「おいおい、張県令どのは、囚人にわしを捕らえさせようとされるようじゃぞ。まもなくそいつが来るようだな」と。
其徒勧之亡、僧曰不可、公正人也、行将安之。
その徒、これに亡げんことを勧むるも、僧曰く、「不可なり。公、正人なり、行きてまさにいずくにか之かん」。
グループの者たちは
「それではどこかに逃亡いたしますかな、ぐはは」
と言ったが、僧はふんと笑って、
「ダメだろうな。県令どのは立派なお方じゃて、そんな方から逃げきれるところなどあるまい。ひっひっひ」
「ぐっはっはっは」「ひいっひっひっひっひ」
たいへんな自信である。
やがて、囚人を先頭に県の役人らが来たとき、羊角禅師は、薄ら笑いを浮かべながら捕らえられたのであった。(続く)
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
明・劉忭等「続耳譚」巻二より。気力みたいなものが無くなってきているんで、一回で訳せません。次回に続く。
おれにもこの僧の呪力があれば、あいつとあいつとあいつを・・・。あ、いけね、おいらはぶたなので、文句があってもぶうぶう言っているだけで呪詛とかはしないんでした。でぶー。