勝手にひよこが逃げ込んで来ただけなのに、「反巨大ニワトリ派をかくまっているのではないだろうな」と叱られることもある。なみだがにじむことばかりである。
街には明るい陽ざしが射していた
だが 神さまのような顔つきの人は
ひとりも通らなかった――― (村野四郎「秋の犬」
秋の昼間は明るいけどすぐに夕暮れてしまう。それだけでなみだがにじんで来る季節でぶ。
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ニンゲンの職場では、キビシイ感じの会議などに出させられて「それで肝冷斎くんはどう考えるのかな」と説明を求められたときとかも、なみだがにじむらしいでぶね。
晏子朝、復於景公、曰朝居厳乎。
晏子朝して、景公に復して曰く、「朝に居ること厳ならんか」と。
斉の宰相・晏嬰さま、朝廷に出かけまして、斉の景公さまに申し上げて言った、
「上さまは朝廷で実に厳しそうな雰囲気でおられますなあ」
と。
最近は何をやっても諫言されるような気がします。景公は「うーん」と唸って言った。
厳居朝則曷害於治国家哉。
朝に居ること厳なれば、すなわちなんぞ国家を治むるに害あらんや。
「(ほめてもらえる、とは期待してませんけど)朝廷で厳しそうな雰囲気でいることが、国家を治めるに当たって何かマズイことありますか」
晏嬰は答えて言った、
厳居朝、則下無言。下無言則上無聞矣。下無言則吾謂之瘖、上無聞則吾謂之聾。聾瘖非害国家而如何也。
朝に居ること厳なれば、すなわち下に言無からん。下に言無ければ上に聞くこと無し。下に言無ければ吾これを「瘖」と謂い、上に聞くこと無ければ吾これを「聾」と謂う。聾・瘖、国家を害するにあらずして如何ぞや。
「朝廷で厳しそうな雰囲気でおりましたら、下じもが何も発言してくれませんぞ。下じもが何か発言してくれないなら、上さまは何も聞くことができませんぞ。しもじもに発言が無いのは、わたしに言わせれば「話すことができない」のです。上さまが何も聞くことができないのは、「聴くことができない」のです。話すことも聴くこともできないのでは、国家にとってマズイことではないとお思いなのですかな?」
「ぶー」
景公さまがぶたになってきているのに、晏嬰はさらに続けます。
合升鼓之微、以満倉廩、合疏縷之綈、以成帷幕。大山之高、非一石也、累卑然後高。
升・鼓の微を合して以て倉廩を満たし、疏縷の綈を合して以て帷幕を成すなり。大山の高きは一石にあらず、卑を累(かさ)ねてしかる後高し。
「鼓」は「斗」のことだそうです。
「(穀物は)一升・一斗の少量を集めて、倉庫いっぱいになるのです。目の粗いばらばらの糸を集め織って、垂れ幕が作られるのです。巨大な山の高さは一個の石だけでできているわけではありませんぞ、小さいのをいくつもいくつも重ねて、あのように高くなっているのですなあ」
なんでもたくさん集めてでかくなるのです。国を治めるのも同じである。
天下者非用一士之言也。固有受而不用。悪有拒而不受者哉。
天下なるものは一士の言を用うるにあらざるなり。もとより受けて用いざるも有らん。いずくんぞ拒みて受けざるもの有らんや。
「世の中を治めるには、ただ一人の人物の意見を聞いていればいいというものではございません。話を聞いても活用できない意見もあるのです。どうして意見が出てこないようにする(雰囲気をつくる)必要がありましょうか」
「ぶーぶー、ぶびー」
もう完全なぶたになってしまった。
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「晏氏春秋」巻一「諫」下より。
こんな説教を聞いていたら、ツラかったことでしょう。訳しているだけでもおいらもなみだにじんできた。
キビシイのは困りますので、緊張感の無いだらだらした会議がいいのです。何かしゃべっても誰も何も聞いてないみたいなのがサイコー。